2019年の談話室

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現状のご報告と今年の取り組み
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本年度の3月末で岡山理科大学を退職いたします。
昭和47年に助手として赴任し、47年の在職期間でした。
赴任する時点では、ほぼ50年の勤務(当時は74歳まで勤務可能でしたので)
アホな、ありえへん! と思ったものでしたが、ほぼそれに近い状況まで勤務させていただきました。
長らく勤めさせていただき、まことにありがとうございました。

研究室を折りたたむのは大変な作業でした。
学長退任以降は、整理・減量の3年間でしたが
現在の建物に引っ越してきてからの歴代のゼミ生の残渣が大量で
大量の土壌サンプルが残されていたり、植物標本の山
3.5インチのディスクやMO,CDの山とも格闘しました。

全部眼をつむって捨てちゃえばすっきりさわやかなのですが、時間がある間はいちいち見て眺め
デジタルデータは解釈して吸い取ったり、紙ものはpdf化し、オリジナルデータも可能な限り吸い取りました。
でも、蒸発していったものも多いと思います。

研究室を空けて次の教員に入ってもらうために早期に明け渡す必要があるのですが
3月23日現在、まだ研究室でこの文章を書いている状態です。
本や文献が大量にあり、家に持ち帰る作業が大変ですが
あと一歩で、残るはごみばかりとなります。

さて、当面このHPは、サーバーが元気な限り現状のままで
岡山理科大学のHPの一部として動くことになっています。
ご利用いただいている皆様、ご安心ください。
HPは講義と密接に関係していることもあり、非常勤で講義を担当する間は活かして頂くつもりです。
メールアドレスも継続です。
講義は、可能な限り時間を空けるために密集した時間配分となっており、
1年の前半にかためてあります。

ところで、研究にかんしては、やめていた積もりの湿原に関するもののニーズが増え
自覚しないままに再び湿原の研究にのめりこみつつあるような状態です。
環境省のモニタリングサイト1000では、鯉ヶ窪湿原のモニタリングを行う必要があり
今までたくさんの学生さんたちと実施してきた調査の集大成となりそうです。

岡山県の自然保護センタに造成した湿生植物園は建設当時とは大きく変わってしまいました。
昨年の1年間は観察しながらの取り組みでしたが
本年は本格的に管理に取り組みたいと思っています。

ドローンで空撮してみると、水路が良くわかり、どの部分に水が回っているかが一目瞭然です。
斜め横から眺めていると水路が見えないわけです。


自然保護センターの湿原を1年間眺めてみて気がついたことは
湿原が硬いのです。
つまり、泥が貯まっていないと言う事で、長らく侵食傾向が続いて
水路が固定化されて深くなり、泥が流れ去ってしまっているわけです。
サギソウやモウセンゴケなどの生育には適していない土壌環境となり、
カモノハシなどの大型の植物が繁茂する原因となっています。

侵食されてしまった水路への対策として、真砂土を投入することにしました。
水路を横断するように、点々と白く見えるのが真砂土の土手です。
水路が埋まって浅くなると共に水位が上昇して、周辺の植生部分に水が浸透しています。
本年度は100袋程度の土嚢に入れた真砂土を投入することになりますが
建設以来ほぼ30年にわたって流れ出た土砂量と比較すれば、ほんのわずかな量でしょう。

もうすぐ緑が伸び始める時期ですが、部屋の片づけができるまでは湿原の手入れを行う時間はありません。
春が待ち遠しくもあり、恐ろしくもあり、といった気持ちです。

新しい時代がやってくる
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昨年度は災害の多い年でした。
  本年が穏やかな一年となりますよう、お祈りいたします。

今年は猪年。
最近のイノシシやシカなどの野生動物の活動状況には問題も多く、難問山積といった状況。
年末の報道には国立公園内での狩猟も考慮する必要があるとの内容であった。
種の保護と生態系の保全の難しさを実感する昨今である。

ところで、岡山県和気町の和気清麻呂を氏神とする和気神社がある。
この神社の狛犬はイノシシであり、猪犬ということになる。
宮崎駿監督の『もののけ姫』に巨猪が出てくるが、イメージは重なっている。

さて、私事ではあるが、区切りの年である。
岡山理科大学に就職したのは1972年の春。
以来47年にわたり、勤務させていただきました。
ほぼ半世紀ということになります。

教員生活の前半は、一般教養と共に教職課程の専門科目である生物学や
生物学実験を担当しました。
後半は生物地球システム学科、現在は生物地球学科。
専門教育に携わりました。
総合情報学部の生物地球システム学科を立ち上げることができたのは
在職中の大きな、そして楽しい仕事の1つでした。

その後、大学経営に携わることが増え8年間の長きに渡って学長を拝命することとなりました。
全力で駆け抜けたといった感がある年月でした。
それまでとはまったく違った人間関係の中で多くの方々のご指導・ご鞭撻を得ることができ
充実した日々を遅らせていたきました。
関係各位に深く感謝いたします。

学長を定年で退職してからの3年間は特担教授として研究室を維持させていただきました。
昨年は「研究に没頭することができました!」と書きたいところですが
研究室からの撤退作業に終われる中、講義やら委員会や講演なども結構多く
精神的には片付けに追われた一年でした。
今年も4月になるまでは、引越しなどで大忙しの数ヶ月になりそうです。

講義に関しては、今までの専門科目に加え、一般教育の「身近な生物学」も担当しました。
一般教育の科目は30年ぶりでしょうか、懐かしさを感じつつでしたが
毎回の小テストなど、学生との係わり度の深い内容にしたつもりで
レポートの採点やホームページの手入れなどで講義時間の3倍以上の時間が必要で大変でした。



今年の植生学会は栃木での開催。
日光戦場ヶ原は40年近く前に全域を歩き回った懐かしい湿原で
大会終了後に独自エクスカーションとなりました。

30年前には自然保護協会に関係した調査で、保全に関して幾つかの提案を行ったが
その1つは、男体山を背にして記念写真が撮れる場所を作ることであった。
当時、周回する観察道からは男体山を背にしてクラス全員の集合写真を撮影できる場所が無く
特に学校行事では残念なことであった。
今回歩いてみると、絶好のポイントで張り出しのプラットホームが作られており
多くの生徒さんたちがポーズをとっていた。

もう1つは、立ち入り禁止の札を立てるのではなく
適当な場所に湿原内部の様子がわかるようなルートを設定すべきであるというものであった。
湿原の周辺を歩く観察道では、湿原の様子が垣間見えるものの、十分には見えない。
このような状況が20分以上続くと精神的に耐えられなくなって湿原に立ち入ってしまう。
一端だれかが立ち入ると踏み跡ができ、これに続く人が出て泥沼化してしまう。
このような場所に適切なルートを設定すると
満足して納得し、湿原への立ち入りが大幅に減少し、湿原を保護することができる。
これらの提言が実施されており、大変うれしいことでした。

戦場ヶ原を訪れたのは10月22日。
秋一色の景色であり、ズミの赤い果実が彩を添えていた。
ズミの開花、ホザキシモツケの開花を見たことがない。
調査の適期が夏から秋にかけてであるためである。

何十日も訪れているのも係わらず
華厳の滝も見てないし、男体山にも登っていない。
四月からそのような時間が取れるであろうか・・・・・?

新しい元号になりますが、私の人生にも新しい時代がやってきます。

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