イヌハギ Lespedeza tomentosa (マメ科 ハギ属) |
9月のはじめ、岡山県自然保護センターのセンター棟前のロータリーに白いハギが咲いていた。花が咲いてみると、小生には未知のハギであった。スックと立ち上がって清楚であり、中秋の名月に似合う立ち姿である。
播種により繁殖させたものであり、土手などに稀に生育している絶滅危惧種のイヌハギであるとのことであった。 少々毛深い点が気にかかるが、立ち姿や花の付き方は茶室むきで「犬萩」の名前はかわいそう。ネットでは「猫萩」よりも大きいので「犬萩」であるとの意見が多いが、ネコハギは匍匐性なので、毛深い点とよく似た白い花を咲かせる共通点があるものの、犬と猫の関係として対比させるには全体的イメージにギャップがある。薄紫の花を咲かせるヤマハギを中心とするハギの仲間は袖垣などに利用されるが、そのように利用するにはやや劣るとのニュアンスの名前なのではないかと思う。 イヌハギは日本、朝鮮、中国に分布する。どのサイトを見ても草原とか斜面などが生育地であると記載されている程度で、本来の生育地未見の小生にはなぜ生育数が少なくなっているのかはわからない。茎の基部は木化するので半低木とされているが、同じ場所に長期間生育し続けるのではなく、時に移動してフレッシュな場所で良好に生育するということだそうで(C氏談)、そのような性質が減少の原因の1つになっているのではないかと思う。 花を見て一週間後に訪れてみると、様相が一変していた。花はまだ咲き残っていたが、花序の柄や葉腋にはたくさんの閉鎖花が形成されていた。現在の個体を生長させて定着した場所での繁栄をはかるよりも、数多くの種子を形成して新天地を求める戦略なのであろう。 |