グンバイヒルガオ Ipomoea pes-caprae (ヒルガオ科 ヒルガオ属
 鹿児島県の奄美大島からフェリーで15分。瀬戸内海の多島海を連想させる海を渡って加計呂間島についた。低い尾根を越えて反対側に出たところが諸鈍(しょどん)。寅さんシリーズの第48作の「男はつらいよ 寅次郎紅の花」のロケ地である。題名の紅の花はデイゴであり、立派なデイゴ並木があって、開花の頃は美しいであろうが、残念ながらここに来たのは真冬と夏で、花を見ることはできていない。

 その諸鈍の浜は以前に比べて広がっている印象で、集中豪雨で各地で斜面が崩壊したためかもしれないと思ってみたが、定かではない。その砂浜にグンバイヒルガオが見事な群落を形成していた。花は直径5cm以上もあり、なかなか美しい。花の中心は色濃く、花弁が折りたたまれていた所が5条の筋となっている。基本的には5が基本数であるが、果実は4つに開裂する。

 茎は太くてしっかりしており、砂浜を一気に直進して群落を広げる能力は高そう。密な群落が形成されると、砂を留めてしまう能力も高いように見える。葉は厚くてしっかりしており、これも汐に対する抵抗力は高いであろう。葉の形はまさに軍配であり、これが名前の由来である。英語名は Bayhops, Seaside morning glory, Beach morning glory, Goat's foot。Bayhopsは湾に生育するつる植物という意味であろう。英語では朝顔と昼顔の区別はないらしい。Goat's footはヤギの足。ひずめの形にみえるらしい。

 分布は熱帯全域の海岸であり、常緑の多年草。日本では沖縄、鹿児島、大分が自然分布であるとされ、それ以北では冬季の低温で枯れてしまうとのこと。地球温暖化によって生育地は北上するものの、海面上昇によって生育可能な砂浜の未来は絶望的である。、
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