アブノメ Dopatrium junceum (ゴマノハグサ科 アブノメ属)
 アブノメは福島県以南の日本各地、朝鮮・中国・東南アジア・インドなどに分布する一年草。水田や沼沢地・湖岸などに生育する。茎の太さの割にずいぶんと軟弱な草であり、茎を持って引っ張るとすぐに切れてしまう。根元付近では枝分かれするが、上部では枝分かれせず直立する。地際の葉は長さ10〜25mm長楕円形で無柄だが、茎の上部になるにつれ葉は小さくなって、ほとんど痕跡状になる。
 8月から10月、葉腋に紫色の花を咲かせる。茎の中部のものは無柄の閉鎖花であり、花を開くことなく種子を付ける。茎の上部に付く花は柄があり、花を開いて遺伝子の交換を行う開放花(正常花)である。茎の下の方の花は水に浸かりやすく、開放花では種子ができにくいのかもしれない。水田に水がある時期、まずは閉鎖花で確実に種子を作って子孫を確保しておき、そのごじっくりと花を開く戦略である。
水田に生育しているアブノメアブノメの開放花(正常花)
上部の葉は小さくて痕跡的中部の閉鎖花(若い果実)地際の葉
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