イトイヌノヒゲ Eriocaulon decemflorum (ホシクサ科 ホシクサ属)
 イトイヌノヒゲは北海道から九州、朝鮮に分布する一年草。貧栄養性の湿原に生育し、鉱物質土壌の湿原に多いが、泥炭質の湿原にも見られる。一年草であるので、湿原の中でも安定した場所には生育せず、侵食傾向のある場所や、破壊された場所、水の流れる場所などに生育する。
 植物体は柔らかく、乾燥させると非常に軽い。茎は(ほとんど)なく、地面から線形の葉をだす。8月頃、根生葉の間から花茎を出す。花茎には5〜6本の筋があり、ねじれて全体的に螺旋状となる。花序の大きさは、総苞を含め、直径7mm程度。総苞の中心部に多数の雄花と雌花がある。花は2数性で、萼片・子房・柱頭などは2つに分かれている。萼や花弁の上端には白色の棍棒状の毛があり、開花時には白色、種子が稔ることになると汚白色となる。
 温暖な低地の湿原に生育するホシクサ属は、シロイヌノヒゲ・イトイヌノヒゲであることが多い(東海地方ではシラタマホシクサ)。シロイヌノヒゲは総苞が狭被針形であり、とがって長いが、イトイヌノヒゲはこれより短く、丸い感じがし、薄くて柔らかい点、シロイヌノヒゲの花茎はほとんど螺旋状にならないが、イトイヌノヒゲの花茎は螺旋状になることなどであるが、最も確実な区別点は花が2数性か3数性であることであり、これらはルーペ程度では判定が困難で、実体顕微鏡の使用が望ましい。
水の流れる場所に生育しているイトイヌノヒゲイトイヌノヒゲの花
表土を移動した攪乱地に生育するイトイヌノヒゲ成熟したイトイヌノヒゲの花序
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