イヌビエの仲間は水田だけではなく、路傍や荒れ地、河原にも良く生育する。それぞれの場所に応じて多様な系統があるようで、形態も変異が多い。分類の基準も図鑑によって異なっており、混乱がある。多様な形質(系統)を持った種として理解すべきなのかもしれない。
ここでは、ヒメイヌビエ・ケイヌビエをまとめ、広義のイヌビエとしておく。
イヌビエとタイヌビエは、小穂の大きさで区別できる。タイヌビエは小穂が大きいので、コロコロとした感じの花序になる。一方、イヌビエの詳細区分は図鑑によって意見が異なるので難しい。当面、詳細な区分をあきらめて全て「イヌビエ」としておくのも1つの対応の仕方であると思う。日本イネ科植物図譜(長田、1989:平凡社)を参考にまとめると、次のようになる。
| 小穂の長さ | 芒 | 生育地と花期 |
イヌビエ
E. crus-galli var. caudata | 3〜4mm | なし〜長い | 農耕地などの湿地に普通、花期は8〜10月 |
ヒメイヌビエ
E. crus-galli var. praticola | なし | 乾燥地でもなく、湿地でもない場所に生育し、花期は7〜9月 |
ケイヌビエ
E crus-galli var. echinata |
2.5〜4cm
若い時は淡い緑色
後に暗紫褐色となる | 河原などに生育し、大型で1mを越えることも多い。花期は9〜10月 |
タイヌビエ
E. phyllopogon | 5mm | なし | 水田あるいはその周辺。花期は8〜10月 |
注:日本の野生植物(佐竹・大井・北村ほか、平凡社 1982)では、ケイヌビエをイヌビエに含め、イヌビエとヒメイヌビエを認めているが、原色日本植物図鑑(北村・村田・小山、1964:保育社)では、ヒメイヌビエはイヌビエに含められており、ケイヌビエが区別されている(ただし、ケイヌビエの学名はvar.
caudata)。