タカサゴユリ Lilium formosanum  (ユリ科 ユリ属)



 タカサゴユリは名前のとおり、台湾原産の帰化植物である(タカサゴ:琉球語のサカサングに由来する台湾の別称)。観賞用として大正時代に導入されたという。テッポウユリによく似た花を咲かせるので、除草されず、広がりつつある。荒地に生育し、花の外側が赤褐色を帯びている点などが特徴的である。テッポウユリとの自然雑種もあり、中間的な姿をしている個体もあって変異がある。
 


 タカサゴユリはよく種子を稔らせ、風によって種子を散布する。侵入した1年目は茎を形成せず、数枚の細長い葉を伸ばすだけである(下の写真)。頼りないようであるが、余分な部分がないので、葉で得た光合成産物をセッセと球根に溜め込んでいる。2年目(3年目か?)には花茎を出して開花する。次年度にはさらに大型となり、太い花茎を出して多数の花をつける。
 どんどん大きくなって繁茂するかと思えば、たくさんの花を咲かせた次の年には、ぱったりと見えなくなってしまう。ユリの仲間はビールスによって障害を受けやすく、長期間同じ場所に生育しにくいことが知られている。同じ場所に長居したために病原菌などが増加したのではないかと思っている。いわゆる嫌地現象、あるいは連作障害である。
 他のササユリなどの種に関して調査したわけではないが、ササユリ・コオニユリなども同様なライフサイクルを持っており、侵入した時点においては茎を持たない状況で生育を開始し、十分に球根に栄養分を備蓄できた段階で花茎を伸ばして花を咲かせると考えられる。この間、十分な日照が得られる立地環境であることが必要である。開花するようになって、長期にわたって生育することは困難であり、新たな場所へと移り住むものと思う。小生も不祥ながら昔ササユリの球根を持ち帰ったことがある。数年は開花したものの、やはり急に消失してしまった。そのように考えてくると、山道に咲く美しいササユリも永遠にその場所に成育できるわけではなく、伐採などの撹乱直後に侵入し、周辺の植生が回復してくるにつれて生育が困難になったり、病原菌などのために、ある程度の年月が経過すると新たな場所へと旅立つものと考えられる。 


理大の生育地

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