アゾラ (雑種アゾラ) Azolla sp.  (アカウキクサ科 アカウキクサ属)
 ため池の水面が赤い水草で埋めつくされている状況に時々出会うようになった。アカウキクサの仲間である。このうち、Azolla cristata は特定外来生物に指定されているが、その交雑品種はアイガモ農法などで導入・利用され、野生化してしまっている。種類を特定することが難しいこともあって、属名であるアゾラと呼ばれている。岡山で繁茂しているアゾラは雑種アゾラと呼ばれるものらしいとのことで、DNA鑑定したわけではないが、その方針で、ここに掲載しておく。

 こんなに猛烈に繁殖しているのは、比較的最近であり、小生のファイルには2007年より古いものがない。水面を覆って盛り上がって繁茂している景観には凄みがある。石を投げ込んでもズボと音がするだけで、飛沫も上がらない。水の中はどのようになっているのであろうか? おそらく、真っ暗で貧酸素状態背あるに違いない。水生昆虫や魚類なども壊滅的な被害を受けているのではないかと思う。もちろん、水草も壊滅的な被害を受けている。毎年、同じ池で見られるかというとそうではなく、次の年にはまったく見られなくなってしまう。ランソウの一種である Anabena と共生しており、窒素固定の能力があるとのことで、富栄養になってしまうからかもしれないが、特定の栄養素を使い切ってしまうのではないか、などと思うがどうであろうか。

 2008年には、岡山市内を流れる旭川にも繁茂してしまった。ため池では、水面を覆いつくすが、河川や用水路では流れてしまうのでそのようにはいかない。しかし、ワンドで繁茂し、どんどん流れていくものの、ものすごい繁殖力であった。川の中を赤いアゾラが帯になって流れていくのは異様である。A. cristata は特定外来生物に指定されているので、栽培してはならないし、根絶する必要がある。一方、人工的に交雑して作出された雑種アゾラ A. cristata × A. filiculoides は特にお咎めになっていない。農業的に利用される作物であるとの認識からであろう。しかし、自然界に出てしまったアゾラは、環境へ大変な影響を与えていると思われ、一考が必要であろう。

 アゾラはアカウキクサのように、赤色を帯びるのが基本と思っていたが、ネットで画像検索すると緑色のものが中心。活発に生育している状態では緑色なのかもしれないし、早春や秋には赤色が強まるのかもしれない。植物体の形としては、水面に広がっている時には平面に広がった形であるが、密集してくるとモコモコした形となる。葉は重なり合い、表面には突起(毛)が密集しており、水をはじく機能を持っている。根は細くて単純であり、枝分かれや細根はない。10月のものには、植物体の裏側に半透明のカプセルに包まれた緑色の粒粒がたくさん見られた。無性芽なのかな、と思っていたが、胞子嚢果などの表現もあり、またの機会に調べてみたい。
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