もぐさ作りへのチャレンジ


1.なぜもぐさを作ったのか
 もぐさは「ヨモギの葉にはえている毛を集めたものである」と書物に書いてある。読み流していたが,、毛だけを集めるとは,どのような手法であろうか・・・・? と疑問になり始めた。その後,草刈をしているさなか,枯れた葉をもむと毛が絡み合って、粘りつくような感触があり、さらにもみつづけると葉肉が砕け落ちて毛が残ることがわかった。色は黒いものの,昔母がやっていた「お灸」に使ったもぐさの感触がよみがえってきた。その後,大量に乾燥機でヨモギを乾かし,密封できるビニール袋の中に保存しておいた。何かの役に立つであろうか・・・

 学生実験でタンポポの調査を行っている。アカミタンポポやカンサイタンポポの特性や生育地を調査する課題であるが,その中にタンポポの種類と共存植物の調査項目がある。設置した方形枠の中に生育しているタンポポ以外の植物をリストアップするわけであるが,植物の名前がわからないであろう事は予想はしていたが・・・・ひどいものであった。ヨモギやオオバコがわからないのである。植物名は教科書にも出てくるので、知識としては知ってはいるのだが、現物と関連付けたものとはなっていないのである。改めて考えてみれば、田舎であってもヨモギを摘んでヨモギ餅を作った経験もなく、ヨモギの名前を知らなくても全く通常の生活で困ることはない。全く通常の生活で、野の草の名前を知る必要はないのであった。

 そこで、以前に乾燥させておいたヨモギの葉でもぐさを作ってもらったわけである。「どうだ! これでヨモギを憶えたか?」 成果のほどについてはもう少し時間をおいて判定することとして、自然観察会などで、使えるネタではないかと思い始めた。

2.まずは情報収集
@経験者に聞く
 すこし年齢が高くなると、結構もぐさを作った経験のある人がいる。自分でお灸をすえた人は少ないが、子供のときにおじいさん・おばあさんにたのまれて作った人が多かった。結構自家生産していたようである。
 Aさん:冬にヨモギが枯れた頃、葉を取ってきて乾かす。後は葉をひたすら揉んで葉肉を落とす。黒い部分を粉にして落とすのが大変だった。
 Bさん:冬にコタツの上で、袋にヨモギの葉を竹の棒で叩く。粉を落とし、色が白くなるまで叩く作業を繰り返す。

Aインターネットで調べる
 検索エンジンで調べると、名産品やもぐさを販売している会社が出てくる。具体的な製造方法はあまり出ていない。「石臼でヨモギの葉をすりつぶし、ふるいで毛を集めた」、「燃えやすいので、もぐさを作る工場は河原などに建設した」などの記述が目に付いた。面白かったのは、「木と木をこすり合わせて火をおこすイベントで、もぐさを使っている」とのこと。簡単に火が付く「燃え草」→「もぐさ」であろうとの話と合致する。

3.実際に作ってみました
@葉の準備
 ヨモギを採取し、乾かす。葉を乾燥させる。葉柄や太い葉脈の部分は、すりつぶす工程の邪魔となる。手間がかかるが、茎についたままの葉を揉むようにしてできるだけ葉柄や葉脈以外の柔らかい部分だけを集める。

A葉をすりつぶす
 石臼がないので、手で揉むことになるが、結構大変である。様々な方法を試してみたが、A4版の封筒に入れ、椅子のキャスターでゴロゴロつぶすのが最も効率的であった。パソコン前の椅子の下に置いておけば、結構知らぬうちにつぶれている。

Bふるいにかける
 手元にあった、土壌用のふるいでやってみると、結構な具合であった。

 AとBを何回も繰り返し、色が白っぽくなるまで延々と繰り返す。色が白っぽくならない段階でも当面もぐさらしくなり、使用することができるが、燃え方が早いようである。しかし、香りは強いのかもしれない。


4.使ってみました
 今時の学生さんは、「もぐさ=悪い事をした時の灸」であり、ツボを熱で刺激し、肩こりなどを治す民間療法であったことなどは、経験はもちろんなく、見たことも少ないようである。肩こりが治るかどうかは別として、使い方を記しておこう。
@もぐさを整形する。先端は着火しやすいように尖らせる。
Aお灸をすえたいツボを「つば」などで軽く湿らせる。これはお灸が離れにくいようにするためである。
Bもぐさの先端に火をつける。
C熱くなるまでじっくりと待ち、堪えきれない熱さになった瞬間、灰皿などにもぐさを落とす。この際、我慢しすぎるとやけどしてしまう。


5.感想
 もぐさを作る最中、そしてもぐさが燃えている最中は特有の香りがただよう。これを「臭い!」という学生がいるし、「いい香り」と表現するものもいる。ハーブは香り、草は臭いなのであろうか。小生としては、結構気に入っている香りである。

【関連項目:ヨモギ


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