1.野外実習に関して
感想
・最初に何度もコケを見る時の視点の話を聞いていたので,実際にコケを前にしたとき,コケの見方がよくわかった.
・標本は,純群落から(典型的なもの)とるということは,維管束植物も同じで,基本は変らないということがよく分かった.
・採集する場所が狭かったので,集中してサンプルを取ることができた.また,維管束植物よりも小面積に複数の種が成育しているという印象を持った.
・採集はできなかったが,羅生門に入ったのは良かった.採集地(加茂川)は,パッと見,大した印象を受けなかったので,現場がここだけだったら興味を持ちにくかったと思う.
・先生の数が多かったので,勉強になった.
・今までコケを意識したことがなかったが,コケを意識して見ると,羅生門はすごいと思った.
・コケに関して全く知識がなかったが,均一な群落を探し一部のみを採取することなど,実際に野外で行うことによってコケの世界がかなり身近になった.今回はじっくりコケを見ることができ,その形態,色,生育場所の驚くほど違うことに気付き関心を持てたことは大きな成果だと思う.
・環境によりコケの種類が違うこと,様々なコケの形を見ることができた.
・採集法(量や袋など)を知り,今までメチャクチャであったことが分かった.
・採取のペースが今まで(高等植物)の場合と違い戸惑った.
・2ヶ所しか観察できなかったが,今回は特に良い場所(特殊な場所)を案内いただいたのだと思う.
・羅生門は初めて行ったが,気温が変わるごとにコケの種類が変わるというのを目の当たりにした.”コケむす岩”をじろじろ観察するのは初めてだったけど,細胞レベルで分類しなくても,大まかな形態で種名までおとせるとは知らなかった.
・小さい面積の中に,多数の種が成育しているのは驚いた.…植生図のミニチュア版を見ているようだった.
・コケの知識は全くなかったが,植物と同じように環境によって住み分けており,それが高等植物よりもっとデリケートな要素で成り立っていると感じた.
・1ヶ所に何種類も群落を作って生育しているのが見られ,それぞれの種の形態を比較しながら採集することができた.
・コケ調査は,むやみやたらに行うのではなく,ある程度群落としてまとまった場所で,じっくり調査をすれば,ある程度効率的に行えるということが分かった.
・普段,高等植物ばかり目で追っていたけれど,足元や樹肌を見るとコケがたくさん生育していることが分かった.改めて自然環境の調査を見直そうと思った.
ご意見(改善すべき点/今後への要望)
(野外での解説)
・コケの生活史などの解説をして欲しい.
・種の特性などを聞きながら,採取させて欲しい.
・もう少し,どんな種類のコケかを,知りたかった.
・重要種だけではなく,一般種で,種とその立地環境との係わり合いをもっと具体的に聞きたい.
・携帯版の検索図鑑を作って欲しい.
【コメント】中級レベルの研修会を設定して対応することになるかと思います.
(観察場所と時間)
・条件の大きく異なる地域を対象にして,もう1ヶ所調査できたら,場所によるコケの種類の違いなどが分かって面白いのではないか.
・野外での移動時間が長すぎた.
・サンプリングの時間がもう少し欲しかった.
・羅生門をはずして加茂川での観察採取に時間をかけるべき.
・野外調査の時間がもっと長いほうが良かった.現地でもう少し同定ポイントを知りたかった.
【コメント】次回は1ヶ所でじっくりとやりたいですね.適当な観察・実習場所がなくて困っています.
(開催季節)
・30度を超える暑さとなり,だれずに野外調査をするなら,涼しい季節がよい.
・現地調査のベストシーズンである秋〜冬に,もう一度このイベントを開催して欲しい.
【コメント】次回は,5月連休の前か後の頃に設定したいと考えています.
(指導体制)
・5〜6人のチームに対して,指導者を1人付けての野外調査が良い.
【コメント】コケを野外で教えるのは,5-6人が限度です.次回は,指導者を増やします.
疑問/質問
・現地で,川が大きく曲がった所の北向き斜面がよいと言われていたが,川の曲がった所というのは,どういう理由からか?
【お答え】「川が曲がったところの北向き斜面」で,特に谷が狭まっているところは,空中湿度の高い状態が保たれているように思います.川が曲がるところは必ず岩峰になっています.風が抜け難いのか,水で冷やされた冷気が岩峰に当たるのか,理由はよくわかりませんが,コケ採集・観察の好ポイントです.
・コケにも,シイ林,コナラ林,アカマツ林みたいに,一般的に見られるものがあるかどうか知りたい.
【お答え】森林植生とコケの関係は,ちょっと微妙です.コケの場合も,各種はそれぞれに特有の気候帯に生育していますので,冷温帯や亜熱帯といった大雑把な植生帯と対応しています.ただし,その気候帯の中で,さらに,各種に固有の微環境(光と水の生育環境)があるようで,その微環境は,必ずしも,ある種の森林が形成される環境とは対応していないようです.例えば,アカマツ林でその林床が日当たりがよく乾燥している場合にはカガミゴケ,コモチイトゴケやハイゴケといった主に暖温帯に生育する種類で乾燥に強い種類が良く出現します.ただし,その林床が湿潤な場合には,オオミズゴケが生育することもあります.また,林床がより暗い場合には,異なる種類のコケが生育します.
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