2.室内同定実習に関して

感想

・実際にオオミズゴケの葉の横断切片を作ったことは,大変勉強になった.こういうことは,文章で説明されてもなかなか分からないので,実体験が一番だと思った.


・同定には常に,実体顕微鏡と光学顕微鏡が必要なので,社内で常時使用できるものを準備したいと思う.


・コケの同定作業は難しく,とてもハードルが高いものだというイメージを持っていたが,今回の研修での作業はとてもとっつき易く楽しく作業できた.


・同じ種を皆で同時に同定すると,他の方の標本との比較もできよかった.


・ビデオを使った指導は,細かいところ,気になるところが,はっきり確認でき,実際に自分でやるとき,あまり悩まずに作業できた.「確認できたらいいんや」というセリフに,非常に納得した.厚い切片を作った私としても,大変励まされた.しかし,たくさんのサンプルを見たからこそ,見分けることができるのだとも思った.


・コケは,全種標本採取が必須とのこと.しかし,コケも群落の様子で,客観的,直感的に類(グループ)やある程度の名前が分かる分類群だと思えた.顕微鏡の世界で,敷居が高いような気がしていたが,研修でコケを身近に思えるようになれた気がする.


・ムチゴケ,カガミゴケ,オオミズゴケとそれぞれ観察する場所(同定のポイント)が異なる3種を例に同定したのは,コケを知る意味でとても良かった.


・コケカッターは,とても使いやすかった.


・コケを顕微鏡で見るのは,とても楽しかった.きれいだなぁと思った.水につける前と後の違いも,驚いた.


・蘚類,苔類それぞれ観察法があり,着眼点を知ることができてよかった.


・説明は,分かりやすかった.


・独特の同定法が分かった.特にオオミズゴケの同定で「表皮を見ること」「切片を作ること」は,高等植物の同定では多用しないので,良い経験になった.


・顕微鏡を使っての同定は,ルーペでも見えない部分がはっきりと見え,野外調査とは違った驚きがあった.それと同時に実際に自分自身が同定をしようと思うと,終わりが見えない作業だと感じた.また,手先の器用さももとめられると痛感した.


・扱った種の特徴はよく分かったが,一般的には,科や属にたどり着くまでに苦労しそう.


・室内同定を一から自分でもし行うとして,どうなるか不安.


・植物も実体顕微鏡を用いて同定することがあるが,ミズゴケ属の葉断面の作成など細かい作業が多く,大変な作業だと感じた.


・切片をうまく切ることができず苦労した.


・高等植物と異なり,顕微鏡での観察の重要度が高い.そのため,プレパラートの作成に大きな労力を費やす必要があり,商業ベースとしては,若干,効率面で難がある.


質問


・慣れてくると,1時間に何種くらいの同定が可能か?


【お答え】同定をする場合には,まず,肉眼・実体顕微鏡で,同定する標本を一通り見ます.この時,種名が分かるもの(1-2割でしょうか)には種名をつけ,そうでないものには属名か科名を付けます.次に,同じ属の標本を集め,その中で「たぶん同種」だろうというものをゴム輪なんかでまとめていきます.さらに,「たぶん同種」のものを,光学顕微鏡で,各種の特徴を確認して,種名をつけていきます.1種当たり5-10分は要していると思います.ただし,中には,自分が苦手な仲間や分類が確定していない仲間の種がある場合があります.このような時には,属名か科名だけにとどめるか,あるいは,必要に応じて,文献を検討し,既同定の標本(エキシカータなど)と比較検討することになります.

 


ご意見(今後への要望/改善すべき点)


・自分で同定して,結果を見てもらうということもしたかった.


22点採ったが,2種ほど分かったところで突放されると,後の処理がいかんともしがたい.一応,初級レベルの同定技術は身に付けたので,後輩の練習用に使おうと思う.


・できれば,採った標本全部に名前を付けて帰りたかった.


・採集した標本を帰って同定できるか不安.自分の標本を同定する時間が欲しかった.


・せっかく採集したコケが未同定となってしまい残念.持ち帰って同定するだけの力はなさそうな気がする.


・同定を体験し,コケカッターを使用しての実習は,少し時間が足りなかった.


・野外調査時に解説を聞いた種を中心に同定すると,コケに対する理解が深まるかもしれない.


・種名を明かしてから同定を始めたので,実際の同定における検索表の使い方の感覚が,いまいちつかみきれなかった.1種ぐらい検索表から同定してみたほうが良かった.

【コメント】野外実習と同様,指導者や指導補助者が少なくて,細かい対応ができなかったと反省しています.1テーブル(4-5人)に一人は指導補助者が必要ですね.また,現地でわかる限り(種名,または属名か科名)を答える,あるいは,実験室で答えるようなやり方をする必要があるとは思いました.