自然植物園では、平成22年11月13日(土)、14日(日)に「きのこ観察会−里山のきのこを観察してみよう−」を行いました。一般参加者は8名、きのこ愛好家の方々がサポーターとして5名、また、自然植物園の館務実習生5名を含めた計18名で行いました。これまで自然植物園では「きのこ」をメインとした観察会は初めてです。さらに講師の井口 潔先生も岡山へお越しになるのは初めてとのことで初めてづくしの会となりました。このような「きのこの観察会」は岡山県内でも開催されるのは珍しく、食材としてなじみがありながらも分類の難しさが原因と思われます。今回の観察会は土日2日連続の会で、1日目は室内で「きのこの同定−初歩の初歩−」を学び、2日目は岡山市北区横井上にある岡山理科大学自然植物園所有の山へ野外実習を行いました。

 観察会初日、倉敷駅すぐの国際交流センターが集合場所でした。こちらは岡山理科大学関連の施設ですが、植物園観察会を開くのは珍しい場所なので参加者の皆様が道を迷われないか心配しました。ところが、そんな心配をよそに開催1時間前から楽しそうに会場に集まってくださり、ほっと一安心です。井口先生と愛好家の方々にもサポートしていただけることもあり、会場は和気藹々とした雰囲気に包まれました。
 
 まず、先生からきのこ研究の現状が示され、きのこ研究が発展途上であり研究者を募集されていることを知りました。また、今回のような観察会を通して、きのこ研究の裾野を広げるために何が必要かを教えて頂きました。次に、実際のきのこの写真を使って、きのこ分類の基礎的な知識(分類形質の名称)の解説です。ほとんどの写真が井口先生によるものです。ところが、写真だけでは知ることが出来ない形質が分類の重要なカギとなります。たとえば、「におい」「味」「触感」それから「第六感」だそうです。次にきのこ観察に必須の道具の説明がありました。第一に「ルーペ」です。きのこ研究者の間では、空港で海外の研究者をお迎えするとき、首に掛けたルーペは良い目印になるそうです。それほどまでに常に持っておかなければならないということです。先生が使われているのは宝石鑑定用でお値段は四千円くらいのものだそうです。また、きのこを採取するときは「バターナイフ(根元から掘る)」「アルミホイル(きのこを傷つけない)」「手提げ袋(きのこ持ち運び)」も必要で、これらは100円均一のお店で購入可能とのことです。とくに「バターナイフ」はなくなりやすく、サポーターの方は持ち手に太いヒモをつけておられました。

 観察会2日目、岡山市北区横井上にある自然植物園で10時から行いました。天気は上々でしたが、きのこには湿気が大切ということで乾燥を少々心配しておりましたが、幸いにも金曜日の夜明けごろにさっと雨が降っていたので、祈りにも似た気持ちできのこの出現を待ちました。現地では、井口先生とサポーターの方を中心として「きのこ観察のための森歩き」指導がされました。井口先生はご専門の「チャワンタケ類」を観察するときは1日に500mも進まないとおっしゃっておられましたが、今回は少し多めに進んでもらいました。さすがに先生も教室の中よりも、現地できのこと出会われたときの目の真剣さが違います。最終的になんと約20種ほどのきのこが見つかりました。植物園スタッフも驚きの数です。またこれ以上に別の山から追加で5種もありました。参加者の方も次々に質問され、先生が丁寧に解説して下さいました。現地では、きのこは「紙袋」と「アルミホイル」に収められ、枯れ葉の中を探すのに「ミニ熊手」が大活躍していました。それから、手提げ袋(紙袋)と道具の入ったリュックサックが基本の装備のようでした。
 

野外観察を終え、顕微鏡観察を行いました。サポーターの方による見事な「きのこスライス」の技に見とれながら、染色できのこを染めると独特の模様が現れます。これも重要な分類のカギとなると言うことで、「におい」「味」「触感」それから「第六感」をフル活動させ充実した会となりました。
 

<井口先生情報>
●井口先生のホームページ「Kinoko Labo きのこラボ」:きのこ最新情報の他、サポーターの方のホームページのリンク集もあります。