自然植物園では、平成23年7月2日(土)、3日(日)に「きのこ観察会」を行いました。今回初めて、講師の先生を井口先生と浅井先生のお二人にお願いしました。参加者は一般9名(内大学生2名、高校生1名)、きのこ愛好家で指導サポーター7名、自然植物園で館務実習をしている学生6名を加えた計24名で開催しました。今回のような2日連続の観察会は昨年の「きのこ観察会」からはじまったものです。2日連続の観察会は、1日目にきのこの概要と観察、2日目に野外実習と顕微鏡観察という計画で行っています。そのため、1日目にきのこの特徴をつかまれた参加者の中には、2日目にはすでにご自分できのこを採取して名前や特徴を講師の先生方に積極的に伺う方もおられました。

 観察会初日、13時から観察会の開始です。講師の先生やサポーターの皆さんは一番遠くて関東地方からいらっしゃいます。最初のサポーターの方が到着されたのは1時間前。きのこの観察会ということで意気込みをひしひしと感じました。お話を伺うと、きのこの会は全国の県ごとにあり、活発な活動が行われているとのことでした。各県で観察会や談話会が開催され、「兵庫のキノコ(神戸新聞総合出版センター、2007年)」のように”兵庫きのこ研究会”が専門の書籍を発行していることがあります。

 井口先生と浅井先生が到着され、いよいよ「きのこ観察会」の開始です。井口先生は、きのこが生活していく上で工夫をしているのか、また、きのこが生きていく上で障害となる”敵”について解説して下さいました。「きのこ」vs「きのこ」のようにある「きのこ」が別の「きのこ」に覆われて生きていくのが難しくなるということもあるそうです。浅井先生は”きのこ”とは何かを中心に各部名称や分類する上での注意点、実際にきのこの写真を示しながらより深く特徴の解説をしてくださいました。「今日ここにあったきのこが明日にはない!」ということが多々あるそうで、きのこ調査の難しさを感じました。先生方の解説の後は、サポーターの皆さんがお持ち下さったきのこの観察です。野外で採取されたもの、わざわざ購入してくださったものなど10種程度が並びました。それぞれ分類に重要な胞子の観察をするために、きのこ7つ道具(実際は7つ以上?)を駆使してプレパラートを作成していただき、参加者の皆さんは解説を伺いながら観察のポイントの説明を受けました。
 
 

 観察会2日目、いよいよ野外実習です。9時集合で、注意点を伺った後、雨が降る前にということで早々に観察に向かいました。観察地は岡山理科大学11号館から体育館につづく山道です。普段は部活の学生さんが通ったり、イノシシが道を掘り返したりしているところです。「植物画教室」でもモチーフ採取のために訪れることがあります。さて、山道に入って5mほど進んだところで、井口先生が突然森のなかへ。出てこられた手にはさっそく「きのこ」が生えた枯れ木がありました。さすが!と一同うなっていると、続けてその枯れ木をチョップして木を折りました。なんとこのきのこは、木を腐らせやすい種類で手で容易に割ることが出来るとのことでした。公園などにこのきのこが発生した場合、結構な太さの枝も落ちやすくなって大変危険なため管理する方に注意を喚起しておられるそうです。参加者の方々も先生方やサポーターの皆さんの手助けを受け、次々にきのこ発見。新種?と思われる種もあり、井口先生曰くきのこの場合、「犬も歩けば新種にあたる」だそうです。雨足が強まったところで部屋に戻りました。
 

 部屋に戻るとサポーターの皆さんが種類別にきのこを並べて下さいました。きのこの分類は聴覚以外すべての感覚を使わなければならないということで、井口先生が率先してきのこのにおいを嗅いで味見。「これはカライ!皆さんも味わって下さい。」サポーターの方から「からいはからいでも”しょっぱい辛さ”なのか”辛子の辛さ”なのかを感じて下さい」と伺い、こわごわ味見をする参加者の方々。続けて、顕微鏡で胞子を観察して分類をしました。最後に井口先生によりきのこの同定をしていただき、解散となりました。
 

 今回名前が分かったきのこは14種類、うち2種類は和名がついておらず、5種類ほど調査のため井口先生がお持ち帰りになりました。「5種のうち、名前が分かるのは2種程度」のきのこの世界の難しさを感じました。
 


<井口先生情報>
●井口先生のホームページ「Kinoko Labo きのこラボ」:きのこ最新情報の他、サポーターの方のホームページのリンク集もあります。