自然植物園では,平成26年10月18,25日(土)に「秋の植物画教室」を行いました.今回の参加者は,初日24名,2日目19名でした.初めてのご参加の方は5名いらっしゃいました.毎年行われる植物画教室は,そのモチーフを大学構内に生えている自然の植物から選びます.生えている植物はあまり代わり映えしませんが,参加してくださっている常連の方の絵の腕前は毎年上がっているようです.教室では,初めて参加される方が常連の方の植物画を見て感心されている場面を良く見かけます.

 昨年,秋の植物画の開催日がまだ夏の暑さを残していたので,今年は1カ月遅く開催してみました.1カ月ずれますと,花だけだったものに実がつき,また違った驚きがあります.今回のモチーフ選びは,開催した建物の目の前の坂を上り下りしただけでしたが,それだけの距離でも参加者の皆さんは楽しんで選んでおられました.ノブドウは,実の色が1粒ずつ微妙に変化するおもしろさから常に秋の人気者です.ところが,ノブドウの葉は切れ込みが深く,その色も深みがある緑色です.この難しさが,毎年書いても飽きないのではないかと思います.その他,カキ(渋)もたくさんの実をつけていました.ここのカキは,手のひらに2,3個乗るほど小ぶりなものです.その見た目のかわいらしさと秋らしい色から,大変喜ばれました.また,カキがモチーフとして良いのは,採取しても1週間くらいはそのままの形を保ち続けることにあります.先ほどのノブドウですと,家で続きを書こうとしてもすでにしおれてしまいます.今年注目は,アメリカハナミズキでした.昨年は不作で,花も実もほとんどついておらず,「もうこの木は駄目かな・・」とがっかりしておりました.ところが,今年は実の数がこれまで以上でした.鮮やかな赤色の実が小さく2つ並んでおり,これも良いモチーフとなりました.

 10月半ばとはいえ,思わぬ陽気に恵まれ,日差しの強いモチーフ採取となりました.会場の21号館生物学実験室に戻ったときは,汗をかいてしまいました.採取したモチーフがしおれてしまいそうでしたので,早々にオアシスにさして水分補給です.スケッチしていると徐々に元気になります.今回,西本先生が便利な台座をたくさんお持ちくださいました.この台座のおかげでいつもは上から目線になりがちなスケッチが全く違う視点から描けるようになりました.春は水入れで代用しておりましたが,数が足りずご不便をおかけしました.

 

 モチーフをB5サイズの用紙に,ほぼ実物大でスケッチします.そのため,モチーフは手のひらサイズが最適です.コンパスに似たディバイダーという道具(どちらも針)で長さを取っていきます.西本先生はさも簡単そうに立体を平面に写し取りますが,実際に自分でやろうとするとその難しさに動きが止まります.初めての方なら尚のこと,そんな皆さんのために毎回スケッチの方法を教えてくださいます.ポイントの1つに「視点の高さと方向を変えない」というのがあると思います.つい,葉は葉だけ,実は実だけを注目してしまいがちですが,常に全体のバランスを見る必要があります.事実,西本先生は参加者の方のスケッチをご覧になるとき,必ず書かれた方の視点に合わせてモチーフを観察し,改善点を教えてくださいます.
 


  2日目(10月25日)は,彩色です.配布したスケッチ用紙は2枚でしたので,そのどちらも完成させていらっしゃる方もおられました.1週間あるとはいえ,なかなか難しいことだと思います.2日目は,水彩絵の具を使った彩色の方法を教えていただきました.まず,絵の具の色の選択です.絵の具には色見本とその名前がついていますが,それはあくまで「このような色」という参考程度のものです.実際には水でのばして彩色し,それを乾かしてまた塗り重ねていくという時間と手間がかかるので色の印象は変わってきます.それを想像しながら色を選ぶのは至難の業ですので,ここは西本先生が色のレシピを板書されます.それにしたがって彩色開始です.まず,欲しい絵の具を探すのが最初の難関です.一度聞いただければ覚えられない名前ですので,植物園では絵の具に番号を大きく書いております.西本先生からお褒めのお言葉をいただいた方法です.次の難関は,絵の具のフタを開けることです.前回使用された後,きちんとフタを締めていなかったり,絵の具がねじについていると,固まって開きません.スタッフも気をつけているのですが,いつもここでご迷惑をおかけしております.

 

 
  西本先生が各テーブルを順にまわりはじめるとちょっとした緊張感が生まれます.それがある程度過ぎると,今度は「はやく来て欲しい」の雰囲気になります.西本先生が手を少し加えると,植物画全体の雰囲気が変わるようです.参加者の方は、少し疲れたら教室をひとまわりして他の方の作品をご覧になり,参加者の方同士で教え合いです.常連の方も初めて参加される方も両方が楽しめる教室になりつつあると思います.


○今回モチーフとなった植物○
マルバシャリンバイ
ノブドウ
カキ
ハナミズキ
エノコログサ
ナデシコ

完成した作品一覧は
こちらへ.

<西本先生情報>
●西本先生のブログ「花の絵日記」:新聞掲載の線画の他,指導教室の情報があります.
http://blog.hananoe.net/