自然植物園では,平成27年5月23,30日(土)に「春の植物画教室」を行いました.今回の参加者は,初日29名,2日目27名でした.初めてのご参加の方は3名いらっしゃいました.大変残念ながら、この植物画教室は今回で最後となりました。最後の日は、たくさんの方に惜しまれつつの開催となりました。ご参加の皆さまには、これまでのおつきあいに感謝しつつ、西本先生からの指導を思う存分受けていただけるよう心を尽くしました。と言いながらも、初日のスタッフの数は1名、2日目は2名と西本先生をはじめ参加者の皆さんご不便をおかけしたことをお詫び申し上げます。

 最後の植物画教室は、これまであまり開催していなかった季節を選んでみました。なぜそれまで開催してなかったかというと、5月末から6月はいわゆる新緑の季節ですので、モチーフを選ぶのが難しいのではないかと考えていたからです。ところが、今回、開催してみると、新たな発見もあり、充実したものになりました。この新たな発見の1つが、参加者の方が口々に言われていた「カキの花」です。カキというと、秋の実の時期をすぐに思い浮かべます。事実、秋の植物画教室では渋柿ですが、カキの実をモチーフにしたことが何度もあります。それでは、「カキの花」というとどうでしょうか?なかなか思い浮かべるのは難しいと思います。しかも、カキの花は雄花と雌花に分かれています!並んでモチーフとして人気だったのが、ハナミズキです。こちらも秋の植物画教室で赤い実を絵が描かれた方も多いです。花に見える白い部分は、花びら(花弁)ではなく、「がく」です。もちろん大勢の皆さんはご存じのことと思いますが、改めて見てみると不思議です。それから、マルバシャリンバイです。マルバシャリンバイは、秋に大型のブルーベリーのような実をつけます。花の色は白色です。葉が肉厚で硬めですので、照りのあるカキの葉、柔らかく毛のあるツツジとは、特に彩色で工夫が必要になってきます。

 もう「夏」でしょうという日差しの元、モチーフを探しに大学構内へ出発。申し訳ないことにスタッフが1名でしたので、なかなかご希望のものをすぐにお渡しできませんでした。特に、カキとハナミズキの採取には高枝切り鋏が必要でしたので、辛抱強く待っていただきました。ツツジとシャリンバイ、ソヨゴ、ヒイラギナンテンなどは、充分手が届く範囲にありましたので、気を使ってこちらを選んでくださる方もおられました。

 教室に戻った方から順にいつもどおりスケッチ開始です。初めての方には、西本先生からの描き方のポイントをご説明いただきます。立体的な物を平面(紙)に描くというのは、とても難しいことです。それをいかに簡単に楽しく描けば良いか、西本先生なら分かりやすく説明してくださいます。一番大切なのは、モチーフのポーズです。いかに素晴らしい花を採取したとしても、描く角度や向きによってその「良さ」は半減してしまいます。植物画はもともと種の特徴を細かく描くことが元になっておりますので、それぞれの種のキャッチフレーズ的な形をつかむことが大事です。このポーズ決めはその後に関わってきますので、時間を充分にかけます。同じ姿勢で描いているととても疲れますが、モチーフを見る目線は必ずキープです。
 

 2日目(5月30日)は、彩色です。しょっぱな、お天気が良すぎる関係で、モチーフの花がほとんど終わっているという事態が発生しました。皆さんにご協力いただき、何とか必要な種類と花の数が足りたということで一安心しました。いつもですと、1日目にまだまだつぼみが残っている場合があり、それを2日目に使うことができていました。西本先生から今回のモチーフの彩色に必要な絵の具の組み合わせが指示されます。植物園でご用意している絵の具にはすべて色別に番号を振り分けており、簡単に見分けることができます。絵の具の名前はなかなか覚えにくい場合が多く、最初は皆さん苦労されていましたが、番号をつけることによって他の方にも伝えやすくなったようです。「黒」と思ったら「プルシャンブルー」だった・・・植物画教室のあるあるです。今回特に注意があったのは、葉の彩色です。先ほど示したように、今回は柔らかいもの、肉厚のもの、照りがあるもの、葉縁に鋸歯があるものなど葉の質感にバリエーションがありました。基本は、薄い色を塗り重ねていくのですが、硬さを表現するための色の組み合わせがとても興味深かったです。
 

 今回おこなわれた西本先生の指導方法に変化がありました。今回は、各班ごとに前の教卓に来ていただき、そこで指導がおこなわれました。それまでは、西本先生が皆さんの席へいらっしゃっていたのですが、人数が多くなると通路が狭く、行き来が大変難しくなります。そこで、このように皆さんの方から来ていただくようにしました。教卓には、西本先生が普段使われている道具や絵の具がそろっています。それを使って指導をいただけますので、植物画家が普段どのように描いているのか、その一端も知ることができました。いとも簡単に彩色される西本先生にただただ感心の皆さんでしたが、実際にポイントを押さえた方法で塗りはじめると一気に筆が進んでいたように思います。自分の場合、何に気をつけたら良いのかを端的に教えてくださるので、集中しやすくなるようでした。
 

○今回モチーフとなった植物○
マルバシャリンバイ
カキ
ヤマボウシ
ツツジ
ソヨゴ
ヒイラギナンテンなど

完成した作品一覧はこちらへ.


<西本先生情報>
●西本先生のブログ「花の絵日記」:新聞掲載の線画の他,指導教室の情報があります.
http://blog.hananoe.net/