「コケ伝導師」養成講座

 (この講座は200564日に奥多摩湖畔山のふるさと村で自然解説員スタッフの皆さん,8名程を対象に行い
 ました)

 

概要

  所要時間:2時間

  目的:1)コケを「こけ」から区別し,

     2)蘚類・タイ類の違いがわかり,

     3)その場所での主な種類がわかり,

     4)一般の方にコケの基礎知識解説ができる

      という人材を養成する.

  内容:1.「こけ的なもの」を集めよう,区別しよう

     2.コケを集めよう,分けてみよう

     3.主なコケは何だろう?

     4.コケで遊ぼう

  便利な小道具:白っぽいシート,ルーペ(x10-x20)

            小ビニール袋,透明ファイルブック

            小スプレイ(点眼用小容器でもいい)

  事前準備:現地で,どこに,どんなコケ(「こけ」も)があるかを観察しておく.

   

 

具体的内容

 

はじめに:あいさつ,講師・参加者自己紹介

 

1.コケを「こけ的なもの」から区別する(20-30分)

 

 作業1.まず,皆で,コケのようなもの(地面,岩,樹幹を覆う微小な生き物)を一つまみづつ集める
    (制限時間
10分)→キャンプテーブルの上に

 

 作業2.受講生だけで,集まったものをグループに分ける

 

 解説1.日本人は,「地面,岩,樹幹を覆う微小な生き物」を「こけ(木毛)」として理解してきた.
    小さな植物には,「○○ごけ」という和名がつくものが多い.

 解説2.コケとは?(生き物の中でのコケのポジション)

    【生き物の主な仲間の系統樹資料の図があると解説し易い】

 

    「地面,岩,樹幹を覆う微小な生き物」には,次のものがある.

 

    【緑色の系列】葉緑体をもつ緑色植物が,水中生活から陸上生活へと適応的進化をとげたものとして
          理解できる

 

     1.被子植物:花を咲かせる;根,維管束が発達する

     2.シダ植物(広義):根,維管束が発達する

     3.コケ植物:*花を咲かせない(胞子体を作り,胞子で増える)

            *根がない(「仮根」と呼ばれる付着器官はある)

            *維管束が発達しない(「中心束」と呼ばれる未発達なものはある)

            (茎や葉など体全体で水分を吸収する)

            *受精に水が必要:「精子」が水中を泳いで「卵」に.

 

         解説:生活環(胞子から胞子体まで)【資料図必要】

 

     4.緑藻:単細胞,糸状,葉状(不規則):茎葉体にならない

 

    【コケ:最初に陸に上がった緑色植物の子孫:水への依存性が強い:両生類的】

        

    【緑色でない系列】

     1.菌類(葉緑体を持たない)

     2.地衣類(菌類と藻類の共生体)

     3.藍藻(黒っぽい,イシクラゲなど)

 

2.コケを集めよう,分けよう(20-30分)

 

 作業前解説1.コケの見方:必ず,ルーペで見ること

          離れて(緑色)

          近づいて(どんな群落?マット,固まり,まばら)

          手に取って(茎の伸び方,枝の出方,葉のつき方)

          ルーペで(葉の形)

 作業前解説2.コケの主な仲間(蘚類:茎が立つとはう,タイ類:茎葉体と葉状体)

        その特徴【資料図があると理解し易い】 

 作業前解説3.生育基物(土,岩,樹幹)が違うと異なる種類が生育すること   

         

 作業1.コケを集める

    (コケかな?と思ったものは何でも;一つまみ;制限時間15分)

 作業2.同じ仲間に分けてみよう

    (テーブルの上に同じものを集める;必ずルーペで確認する)

    

 解説.コケの主な仲間を解説する

     コケの分類:胞子体の構造で分類している  

     大きくは3群:      

      蘚類:胞子体が残る

         見かけで2つに分けれる

          1)茎が立って枝が少ない

          2)茎が這い枝が羽状にでる   

      タイ類:胞子体はすぐになくなる

          見かけで2つに分けれる:茎葉体か葉状体か

      ツノゴケ類:胞子体がツノ状で2裂する

          2科しかない,種数も少ない,暖地に多い

 

3.主なコケは何だろう?(20-30分)

 

 作業1.集めたもので,目に付く主な種はどれ?

     基物ごとに分けてみよう.

     受講生が皆で相談して決める.

 

     種名を小カードに書きこみ,何の上に生育するかをメモする

 

 作業2.採集品とカードを透明ビニール袋に入れて,

     (湿っている場合は,乾かすこと)

     小ビニール袋は透明ファイルに入れる    

   (なお,今回は,山のふるさと村に寄贈しました)

     

 

4.コケで遊ぼう(上記13の作業・解説時に適宜行う)

 

【岩上や樹幹など乾燥地に生育する種を解説するときに】

 作業:(エゾスナゴケ,ハマキゴケ)水をかけて葉が開く様子を見る

 解説1:コケは根ではなく,体全体で水を吸収する.

     乾燥した時は,葉をとじ,休眠する.高温にも耐えれる.

     濡れると,瞬時に,光合成を開始する.

 解説2:コケの仮根とシダの根:土を水で洗い,ルーペでみると

     違いがよくわかる.コケは1細胞列.

 

【胞子体の解説をした時に葉や無性芽が落ちやすいものがあれば】

 作業:群落を手でなでる

 解説:無性生殖で繁殖する(受精して胞子体を作らなくても増える) 

 

【胞子体の解説をするときに,胞子散布中の適当な胞子体があれば】

 作業:「さく」を水で濡らし,乾くときどうなるか,ルーペで見よう

 解説:胞子がつまった「さく」なら,胞子がスポンと放出されることがある.

   「さく」の口の部分に,「さく歯」があり,動きながら,胞子をまく.

 

【水辺のコケがあれば】

 作業:コケの固まりを白い紙の上で,ほぐして,広げてみよう   

 解説:コケは小昆虫の棲家になっている.  

 

おわりに:

 「コケ」も,わかるようになると:

    @その場所の自然度(自然の状態)が理解できる

    @その森が「生きている」かどうかがわかる

    @その場所の水環境の状態がわかる

 コケに興味がある方:岡山コケの会HPにアクセスして.

           簡単なコケ図鑑の紹介(をした方がいい)

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