●平成12年植物歳時記



5月8日〜5月22日展示

モチツツジ
 Rhododendron macrosepalum Maxim.

  関西の丘陵や低山部の急な斜面上にみられるツツジであり、酸性土壌を好む。萼(ガク)に腺毛が多く、触ると粘るのでこの名がある。花色は淡い紅紫〜濃い紅紫色であり、朱色系のものはないが、しばしば朱赤色の花を持つ近縁のヤマツツジと雑種をつくる。これをミヤコツツジRhododendron x tectum Koidz.といい、モチツツジとヤマツツジの色の混ざったさまざまな濃度の花をつけ、目を楽しませてくれる。植物園ではこれらがすべて観察できる。



5月15日〜5月22日展示

タカノツメ
 Evodiopanax innovans (Sieb. et Zucc.) Nakai

  北海道から九州までの山地に普通な落葉の亜高木。3枚ひ1組の葉は枝から突き出すさらに短い枝(短枝)の先に集まってつく。この3枚1組の葉の一つを小葉といい、これが三つ並んで鷹の爪のように見えることからこの名がある。タカノツメ属は東亜だけに見られ、日本と中国にそれぞれ1種類しか分布しない。淡い黄緑色の花が5−6月に短枝の先にでる花軸に多数集まって咲く。なお、材は白くて柔らかいので彫り物などに使われる。


5月29日〜6月2日展示

スイカズラ
 Lonicera japonica Thunb. var. japonica

  山野に普通の蔓性低木で、茎は右に巻く。茎を折ると髄は中空である。花時には甘い香りがあたりに漂うが、花冠の下部から蜜をだし、吸うと甘いことからこの名がある。また、葉が冬を過ぎても落ちず残ることから漢字では忍冬と書く。日本では詩にも詠まれるほど親しみのある植物であるが、北米では野生化し大繁茂することから、クズとならんで目の敵にされている植物である。日本産スイカズラ属は約20種あるが、自然植物園ではスイカズラのほかウグイスカグラやヤマウグイスカグラが見られる。


6月5日〜6月8日展示

ネジキ
 Lyonia ovalifolia (Wall.) Drude var. elliptica (Sieb.et Zucc.) Hand.-Mazz.

  岩手県以南の本州、四国、九州の山地の陽光の場所に生育するツツジ科の落葉低木。西日本では、酸性の土壌が薄い丘陵部でしばしば有占することがある。花は6月初旬に、前年の枝につく葉の腋から花序をだし、白い壺状の花をつける。本属は東亜と北米のみに分布し、植物地理学上興味あるグループである。自然植物園では、比較的多く見られ、この時期、あちこちに白い花をつけているのを目にすることができる。


6月5日〜6月8日展示

ヤブムラサキ
 Callicarpa mollis Sieb. et Zucc.

  宮城県以南の本州、四国、九州、朝鮮に分布する高さ2〜3mの落葉低木。葉は対生し、表面は短毛、裏面は星状短毛で覆われる。葉先は尾状に尖り、葉の基部はやや円形である。花は6月〜7月に軟毛の密生した紅紫色の小さな花を集散花序に数〜10数個つける。果実は球形で秋に熟し、紫色で美しく、近縁のムラサキシキブCallicarpa japonica Thunb. var. japonica とともに生け花に珍重される。


6月12日〜6月16日

クリ
 Castanea crenata Sieb. et Zucc.

  ブナ科クリ属の落葉高木で、九州から北海道西南部まで分布する。堅果は食用になる。5から6月頃、今年の枝の葉の腋からしっぽ状の花序(尾状花序)をつけ、雄花は尾序花序に密に多数つくが雌花は尾状花序の基部に1〜2個がつく。花は独特の臭いがある。葉は長さ8〜12cmの長楕円形で互生し有柄。葉脈は16〜23対で、表面は濃緑色、裏面は密に細やかな星状毛と小腺点があって淡緑色。材は強く、割りやすく、均質で、工作しやすい。また、水や湿気に強いので古くから建材や家具、鉄道の枕木や鉱山の坑道を支える柱材に使用されてきた。