●平成13年植物歳時記:5月



コバノガマズミ(スイカズラ科)
Viburnum erosum Thunb. ex Murray var. punctatum Franch. et Savat.

・ガマズミ属は、常緑のものと落葉のものがある。

・前者の代表は公園や庭に良く植栽されるサンゴジュであり、後者の代表はいわゆるガマズミであろう。

・この仲間は、自然植物園内ではガマズミ、ミヤマガマズミ、コバノガマズミが自生している。コバノガマズミは、葉のねもとの軸(葉柄)が2〜6mmと短く、10mm以上ある他の2種と区別できるが、これらが混生しているところでは、しばしば中間的な性質を示すものがあったりするので、注意が必要である。

・これらの果実は赤く熟し、よく熟したものは甘く食べられる。熟した実を瓶などの集めておくと、自然発酵し、酒となる。木の穴などに動物が貯蔵した実が自然発酵することもあり、これを昔の猟師は猿酒といった。





カラスノエンドウ(マメ科)
Vicia angustifolia L.

・本州,四国,九州の暖地では,道端にごく普通にみられる越年草。茎は長さ50〜150cmで,断面は四角形をしている。花は4から6月ごろ葉の腋に1から3個づつ付き,長さ12〜18mmで紅紫色。

・このグループには仲間が多く,食用にするソラマメ(Vicia faba L.)もその一つである。

・名前の由来には、「カラスの食べるエンドウだから」、「豆果がカラスのように黒く熟するから」という説がある。

・中国では干したものを薬として使用している。




 
ヒイラギナンテン(メギ科)
Mahonia japonica (Thunb.ex Murray) DC.

・ヒイラギナンテンと良く似た名前の植物に「ヒイラギ」がある。

・どちらも常緑低木であるが、ヒイラギナンテンはメギ科、ヒイラギはモクセイ科の植物であり、前者は日本へは江戸時代の中ごろに園芸植物として渡来したのに対し、後者は関東以西の暖地に広く自生している。

・ヒイラギナンテンは早春に茎の頂部から出た数本の長い湾曲した軸に黄色の花を疎らにつける。

・ヒイラギの花期は秋で、葉の腋に白い花をいくつかつけ、よい香りがする。





カナメモチ(バラ科)
Photinia glabra (Thunb.) Maxim.
ネズミモチ(モクセイ科)
Ligustrum japonicum Thunb.

・木の名前に「モチ」がつくものはいくつかあるが、学内ではカナメモチ、ネズミモチ、モチノキの3種が代表的なものである。

・いずれも常緑で光沢のある葉を持っている。

・カナメモチはバラ科に属し、葉の縁に細かい鋸状の切れ込みがあり、枝に互生する。春先の新しい葉は赤色となる。

・ネズミモチはモクセイ科で、葉の縁に切れ込みがなく、枝に対生する。

・モチノキはモチノキ科に属し、葉の縁に切れ込みがなく、枝に互生する。


イタドリ(タデ科)
Reynoutria japonica Houtt

・タデ科はかなり大きなグループで約30属あるが、イタドリはそのうちのイタドリ属を形成し、我が国にはイタドリとオオイタドリ(Reynoutria sachalinensis (Fr. Schm.) Nakai)が分布する。どちらも崩壊した日当たりの良い斜面などにごく普通にみられる雌雄異株の植物である。

・イタドリは全国分布するが、オオイタドリは本州北部、北海道にみられ、その名が示すように葉と葉鞘(葉柄基部を包んでいる小さな葉のような部分)が大きいことから区別される。

・イタドリの幼い苗は中空でやわらかく西日本では「スカンポ」とよばれ、食用にする。オオイタドリも食べられるが、北にはもっと美味な山菜が豊富にあるためか見向きもされないようである。