キイチゴ属の果実 



 バラ科は多様な果実をもっており、 リンゴ、ビワ、モモ、さくらんぼ、イチゴなどが挙げられます。 それぞれの果実はどの部分を食べているのでしょうか? リンゴやビワは萼頭、モモやさくらんぼは子房に由来する果皮を食べています。イチゴといえばスーパーに並んでいるオランダイチゴを思い出しますが、 野山に生えているキイチゴやクサイチゴも食べられます。 しかしこれらの構造は異なっているので、オランダイチゴはイチゴ状果、キイチゴやクサイチゴはキイチゴ状果として区別しています。
○イチゴ状果
    オランダイチゴやヘビイチゴの果実は、外側にたくさんのゴマのような粒がついています。
    その粒は種子だと思いがちですが、実は果実なのです。
    果実はめしべの子房が成長したものですが、その証拠にめしべが残っているのが分かると思います。
    私たちが食べている赤色のおいしい部分は花托の成長したところです。 
ヘビイチゴの果実
○キイチゴ状果
    キイチゴ類はラズベリーとも呼ばれています。
    花が終わってもオランダイチゴのように花托はあまり成長せず、表面には水気の多い果実がたくさんついています。この多肉質の粒の中にそれぞれ1個ずつの種子が入っています。
    この一粒一粒は、ウメ・モモ・さくらんぼの果実に相当する核果(子房が成長して外側が多肉質に、内側が硬化して核となったもので、核の中に1個の種子をもつ)で、これらが球状に集まっているので、集合核果と呼ばれています。  
    つまりキイチゴやクサイチゴは、子房の集まりを食べていることになります。
ナガバモミジイチゴの果実

 ちなみにバラ科の果実は、含水量が多い、肉質の果皮を持っているので、液果(多肉果、湿果)と呼ばれています。液果は乾果に対する語で、受精後、子房壁が肥大して果皮となり、成熟後も乾燥しないで柔らかな果皮を維持しています。奬(しょう)果(ブドウなど)・ナシ状果・ウリ状果・ミカン状果・核果はいずれも液果の一種で、真皮の構造や果皮の分化の違いで区別されます。

                                                                                                               
(文章:尾崎 聡子)


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