暖かさの指数 Warmth Index (1)
 生物の生理作用は基本的に酵素などによる「化学反応」であり、温度によりその速度は大きく影響を受ける。気温が低下すると生物の生理活性が低下し、様々な生理活動が行われなくなり、結果として成長できなくなる。

 生物の生理活性がほとんど停止する温度は、種によって様々であり、雪渓や氷河の表面で生育する「雪上藻」の仲間はほぼ0℃であると思われるし、温泉の湧出口に生育する「温泉藻」は80〜90℃でも生育できる。秋に芽生え、春に花を咲かせるナノハナの仲間は低い温度でも生育が可能であろうし、春に芽生えて秋に花を咲かせる一年草は高い温度を要求するであろう。また、夏と冬では酵素を切り替え、低温でも高い活性を実現できる生物も報告されている。例えば、コイは低温になると冬用の酵素に切り替え、冷たい水の中でも活発な活動が可能な状態を実現している。

【有効積算温度】
 植物の成育・生息に必要な温度は、一定温度以下では無意味であると考え、基準になる温度以上の有効な温度を積算することによって植物の生育・開花・結実を把握する方法が行われてきた。具体的には、基準温度が5℃であるならば、5℃以下の温度は無意味なので、有効温度は0であり、7℃ならば 7−5=2 が有効温度となる。
 この有効温度を積算したものが有効積算温度であるが、基準温度以上の有効温度を時間単位で積算するか、日単位か、月単位かで積算有効温度の意味が異なってくることになる。稲作などでは日平均気温で算出するのが通例であり、有効積算温度(℃・日)とあらわすことになる。

イネの有効積算温度の例

 北海道で栽培される早生品種:ゆきまる
 発芽から1枚の葉が出るまでの有効積算温度:芽だし有効積算温度:184℃・日

 有効積算温度が184℃・日
 平均気温が10℃であれば、有効温度は10-5=5
 184/5=36.8 → 1枚の葉が出るまでに37日が必要

 平均気温が20℃であれば、有効温度は20-5=15
 184/15=12.3 → 1枚の葉が出るまでに12.3日でよい

 気温の低い地域では有効温度を稼ぐために春早くから苗作りが始まり、田植えも早い季節に行われることになる。岡山県県北の蒜山地方では5月の最初頃に田植えが行われ、県南の平野では6月の中頃以降に田植えが行われる。

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