植物の基本数



 植物を同定するためには、植物の基本構造を理解する必要がある。植物の器官は根・茎・葉・生殖器官(花・果実・種子)に分けることができる。本実験では、特に花に注目し、植物の分類に関する基礎を学ぶこととする。

花の基本数
 生殖器官は系統を見る際には最も重要な項目である。葉や茎などは生育環境に適応して大きく形態を変化させてきたが、生殖器官である花およびこれに関連する果実や種子などはよく系統を反映しており、共通性が高い。例えば、花弁の数を見ると、2・3・4・5・・・・・・などの枚数があり、基本的には同じ仲間の植物は同じ数あるいはその倍数になっている。
 花序は葉が変形したものであり、花弁や雄しべ、萼や苞も葉が変形したものである。したがって、何枚の葉から1つの花が形成されているかが、基本数であることになる。この基本数はそれぞれの種において全ての要素で完備されていることは少なく、例えば花弁数:5,雄しべの数:10等のように、一部は減数したり、一部は倍数化していることも多い。
 
基本数植物の例
イネ科の一部
カヤツリグサ科、イグサ科ユリ科アヤメ科ラン科などの単子葉植物に多い
アブラナ科アカバナ科ケシ科モクセイ科など双子葉植物の一部
多くの双子葉植物 バラ科ヒルガオ科・・・・・etc.


花の基本的構造
 双子葉植物を例に、花の中心部から見ていこう
@雌しべ:内部に発達して種子になる胚珠がある。それを取り囲んでいる部分は子房。子房は発達して果実の果肉の部分になることが多い。子房の内部はいくつかの部屋に分かれていることが多く、これは基本数と関連している。その上部に柱頭と花柱がある。柱頭の先端はいくつかに分かれていることが普通であるが、これも基本数と関連しているが、減数していることも多い。

A雄しべ:細い糸状の花糸と花粉を含んでいる葯からなっている。これも基本数と関連していることが多いが、倍数化したり、減数していることが多く、一致しない場合も多い。特に栽培種では倍数化したり、花弁に変化して八重咲きになるなど、変異が多い。

B花弁:比較的基本数とよく一致する。園芸品種のサツキでは、葉に斑が入るものは花弁にも斑があるものが多い。葉が変形したものであることがよくわかる。

C萼:花を支える緑の小さな葉であり、花弁数(基本数)と一致する場合が多い。発達して大きくなり、花弁の機能を果たす例もある(例:アジサイ)。

D苞:萼の下側にある葉状の器官。通常は緑色であるが、白色であったり、花弁状に発達することもある。

E総苞:たくさんの花が形成される花序の根元に発達する苞を総苞という。例えば、タンポポの仲間では、この総苞の形状で帰化か在来かを区別する。(例:セイヨウタンポポカンサイタンポポ

 これらの各パーツへの名称は、主に双子葉植物のいわゆる典型的な花に対して付けられたものである。単子葉植物ではこの名称を完全に適用することは困難であり、簡単ではない。イメージとしては、葉と花弁の区別が容易ではなく、明瞭な花弁が存在しない場合も多い。
 イネ科の花では、雌しべや雄しべを覆っているものを頴(エイ)とよぶ。最も内側にあるものを内頴、その外側にあるものを護頴、更にその外側に類似のものがある場合、これを苞頴という。護頴からは長い糸状のものが出ていることがあり、これを芒(のげ)という。

花序
有限花序と無限花序
 花の茎への付き方を花序という。1つの茎に複数の花が形成される場合、茎の下に形成された花から開花し、次第に上部に咲き上がるタイプの花序を無限花序という。多くの場合、茎の先端では新たな花が形成されつつ、下の方から大きくなったつぼみが開花するので、良好な生育環境が継続する限り、新たな花芽を形成し、次々と開花するからである。一方、茎の先端部分の花がまず成熟して開花する場合は、新たな花茎を形成しない限り、花の数は増加しない。このような場合はあらかじめ花の数が決定されていることになり、有限花序とよぶ。



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