2003年度 旭川植生調査データ
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【スタンド位置指数、種位置指数の意味】
反復平均法に限らないが、多変量データを解析する場合には、最も性質の異なった2つの調査スタンド(あるいは種)を見つけだし、その調査スタンド(あるいは種)を両極とし、その他のスタンドをその軸上に配置する。今回の例では、スタンドNo.1(3-1)とNo.31(5-5)は、共通に出現する種が存在せず、最も性質が異なるスタンドであると算出され、スタンド位置指数はNo.1が「0」、No.31が「100」とされ、その他のスタンドは両スタンドの間に類似度によって配列されたわけである。
同様に、種の出現傾向はギョウギシバとチガヤが最も異なっており、これらを両極としてその他の種が出現傾向の類似性によって配列されている。
【まとめ方】
1.表は何を意味しているのか?
調査データは反復平均法によって調査スタンドと種を序列したものである。調査スタンドの配列は、何を意味しているのであろうか? 今回抽出された軸の意味を考える必要がある。同時に調査した環境条件(植生高、植被率、土壌硬度)などとの関連性を解析する必要がある。これらのファクター間で関係解析をおこない、抽出された軸の意味を考えてみよう。
2.植生単位の抽出 −群落区分−
類似した構成種を持つ植生調査データをまとめ、「○○群落」等のように区分する。自然の植生は中間的なものもあって、明確に区分できるものではないが、植生を説明するためにはいくつかの群落に区分して名称を付けるとやりやすい。
1つの群落は類似した種組成を持つ調査スタンド群から構成されていなければならないが、その判断にはスタンド位置指数が参考になる。類似したスタンド位置指数のスタンドは、出現種も類似しているはずである。どのスタンドからどのスタンドまでを1つの群落にするかに関しては、スタンド位置指数のギャップを参考にすると良い。隣接する調査スタンド間に相対的に大きな位置指数のギャップがある場合、そのスタンド間で種組成にギャップがあることになる。今回の例では、2〜3つの群落に区分することができるであろう。
群落区分がなされると、結果的にその群落を区分する特徴的な種あるいは種のグループが抽出されることになる。具体的には、次のようなものである。
これらの種・種群は植生単位を区分する目安となる種であり、「区分種」あるいは「識別種」と呼ばれる。植生単位に名前を付ける場合、これらの種名を使うと群落の性質を的確に示すことができる。使用したい植物名が複数ある場合には、2種の植物名を使用できる。2種の植物に高さの違いがある場合には植物名の間に「−」を、高さが同じ場合には「・」をいれる。具体的には、アカマツ−コバノミツバツツジ群落(アカマツは高木層、コバノミツバツツジは低木層)、アカマツ・コナラ群落(アカマツもコナラも高木)などである。
群落の名称に使用する種は、全てのスタンドに出現する必要はないが、群落名によってその植生がイメージできるようなものであることが望ましい。ただし、2つの典型的な群落があり、それらの中間的な群落が存在すると考え、「移行群落」という名称を用いても良い。
3.群落の環境解析
植生単位を抽出すると、その植生単位毎の環境の平均値と散らばり具合を求めることができる。群落ごとに植生高や土壌硬度などの数値を平均してみよう。分散が大きいならば、そのファクターはその群落の形成要因ではないと考えられるし、他の群落と有意に異なるならば、そのファクターは植生が異なることに関し、貢献していることになる。なお、今回の場合、土壌硬度のみが群落形成に関する環境要因であり、植生高や出現種数はその結果であることに留意し、原因と結果を区別して考察するように。
4.種の解析
種は算出された種位置指数の順に並んでいる。種位置指数は、出現頻度にも影響を受けており、スタンドの中央部にわずかに出現する種も全てのスタンドに出現する種も、ほぼ同じ50付近の値となる。今回の例では、ネズミムギはほぼ全部の群落に出現しており、初夏の高水敷には場所を選ばず生育することがわかる。このような種を常在種という。
同様な出現傾向がある種は、類似した種位置指数を示すはずである。そのような観点から、種をグルーピングすることもできる。
多くの種は、環境にしたがって生育する範囲や被度が異なっている。それぞれの種がどのような環境に生育しているのか、考察してみよう。一年草であるか多年草であるか、帰化植物か在来種か等の植物の性質も参考になるかもしれない。