野外調査法実習T
波田班 2014年7月18日実施
レポート課題につて

1.森林の現存量の算定
 レポートでは、今回計測した、10m×10mの方形区の中に生育している植物の総重量を推定してみよう。手順としては、以下の様な流れになります。

(1).体積の算出
 樹木の質量を正確に求めるためには、茎・葉・根の重量を計測する必要があり、非常に困難です。そこで、誤差を含むことを覚悟して、簡略化した方法で計算することを試みてみよう。
 今回は、樹木の形状を単純化して円柱とみなし、体積を求めます。
円柱の体積は、円の半径と円柱の高さが分かれば計算できます。
(円柱の体積=底面積×高さ=半径×半径×円周率×高さ)
 今回は、円の半径=樹木の胸高直径の半分。高さ=樹高。以上のデータを使用しましょう。なお、実習中に現地で計測したデータは胸高周囲(つまり、円周)なので、胸高直径に換算するのをお忘れなく。
 計算する際には、単位に注意。全てセンチメートルに換算してから計算した方がよいでしょう。これを、1〜4班までの合計4地点のデータについて、計算してみましょう。

(2).重量の算出
 体積が明らかになれば、比重をかけることにより、重量を求めることが出来ます。
樹木の比重は、種類によって違いがある。以下の気乾比重を用いて、計算してみよう。

コナラの気乾比重:0.76
アオハダの気乾比重:0.66
タカノツメの気乾比重:0.54
ウリカエデの気乾比重:0.63
カキの気乾比重:0.61
アカマツの気乾比重:0.52
ネジキの気乾比重:0.67
リョウブの気乾比重:0.74
ヒサカキの気乾比重:0.71

(原色木材大図鑑、1962、保育社から引用)

ソヨゴとヤマウルシの比重については、資料が見つかりませんでした。そこで、参考値として、ソヨゴは気乾比重:0.60、ヤマウルシは気乾比重:0.54を与えておきましょう。

(3).森林の現存量
 上記の体積と比重から、それぞれの樹木の重量を計算してみよう。さらに、調査区ごとに各樹木の重量を足し合わせて、総重量を求めてみよう。
 レポートでは、データを適切な形態にまとめて、グラフなどで分かりやすく表示してみよう。
 重量の他にも、樹木の種類ごとの本数・胸高直径をグラフや表にまとめて見ると、各調査区の状態がよくわかるでしょう。また、立ち木の密度(本数/面積)を評価するのも面白いかもしれません。
 また、3班と4班が調査した地点は、アカマツがマツ枯れ病によって、多数枯死していました。そのため、アカマツが枯死する前の森林の現存量を評価した上で、マツ枯れ病の影響によって失われてしまった現存量を評価してみましょう。

(4).森林の現存量の比較
 今回の調査では、調査区ごとに地形に違いがありました。1班と2班は斜面の下部、3班と4班は尾根でした。地形ごとに、森林の現存量にどのくらい違いがあるか比較して、その原因を考察してみましょう。
 また、今回求めた樹木の重量から、調査した森林が固定した二酸化炭素の量を推定してみるのも面白いでしょう。今回調査した場所で、アカマツの切り株の年輪を数えてみると約55年でした。このデータを使って、およそ年間あたりどのくらいの二酸化炭素を固定していたのかを考察することもできるかもしれません。

2.参考、および資料
(1).自然保護センターの森林の歴史
 今回調査した森林は、付近の田畑への落葉落枝(肥料)の供給や、薪炭材の採取に利用されていたアカマツ林だったとされています。1960年代に、肥料や薪炭の需要が少なくなったためか、材木などに利用するためアカマツは伐採されました。そのため、現在、存在している森林は、1960年代の伐採の後に再生したものである事になります。

○岡山県自然保護センターの里山管理に関する提言
http://opnacc.eco.coocan.jp/pdf/chosa-kenkyu/vol01/01_p29-40_satoyama.pdf
○岡山県自然保護センターの森林植生 1.種組成と群落構造
http://opnacc.eco.coocan.jp/pdf/chosa-kenkyu/vol02/02_p13-24_shinrin_sosei_gunraku.pdf

(2).マツ枯れ病
 一方で、調査地では、「マツ枯れ病」の被害により、枯れているアカマツが少なからず見受けられました。アカマツが枯れてしまうと、森林のどのくらいの重量が失われてしまうのかを考察するのも面白いでしょう。

○マツの年輪に刻まれた歴史 
http://had0.big.ous.ac.jp/thema/treering/treering.htm
○松枯れ病 
http://had0.big.ous.ac.jp/thema/matsugare/matsugare.htm


3.課題の提出期限
 2014年9月19日(金曜日)とします。21号館6階の波田研究室前の提出箱(封筒)に提出してください。

4.引用文献
貴島恒夫・岡本省吾・林 昭三.1962.原色木材大図鑑,pp. 130-143.保育社,大阪.

補足。
 なお、現地調査において、3班の調査した地点は、松枯れ病で枯れたマツが危険であるため、伐採されてしまいました。伐採を行う前は、4班の調査した地点とほぼ同じ状況でした。この点を考慮して、解析・考察を行なってください。


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