森山昭雄・梅沢広昭編著 『日本人の忘れもの、海上の森はなぜ貴重か』 大切な「忘れもの」を知らない間に見失わないために 研究者と市民の願いを集めた一冊 編集協力：海上の森を守る会 \1,800（税込み、送料別） A5版240頁、カラー25頁 印刷：名古屋リプリント

海上の森の紹介　　　曽我部行子（ものみ山自然観察会）

里やま、日本人の忘れ物　-　海上の森はどのような森だろう。10年間森を歩いてきた筆者がご案内します。観察会のルートに沿う形での紙上観察会です。


愛知万博の構想とその変遷　　梅沢広昭（ルポ・ライター）

バブル時代の計画に翻弄された11年　-問題となっている愛知万博と新住事業の計画は、いつつくられ、どう変化してきたか。そして、推進のために愛知県は何を言ってきたのか。構想打ち上げからBIE激震までを振り返る。

第一部　講演の部

地形・地質・地下水　　　森山昭雄（愛知教育大学）

なぜ海上の森に湿地があるのか？　その地形・地質と水文環境を探る　-　森の動植物のまさに「足もと」である土壌の地質と、植物の生育に不可欠な地下水の流れを、独自の調査から解明する。川の水が、その川の流域を越えて注いでいるという、驚きの結果が明らかに。

植　生　　　　波田善夫（岡山理科大学）

海上の森は禿げ山だったのか　-　その土壌の上に、植物sがどのように生えているのか。また、県が「海上の山は禿げ山だった」といってきたが、どの程度の禿げ山だったのか。人間はどのようにその自然とかかわってきたのか。1948年からの航空写真と80年間生えてきた木を使って、県の「禿げ山」論を検証する。

昆　虫　　　　八田耕吉（名古屋女子大学）

昆虫から見た海上の森の生態系　-　ギフチョウは、植草を移植するだけで守られるのか。大正池の水を抜いただけで影響を受けた水生生物が、本当に開発の影響を受けないのか。環境アセスメントの問題点をズバリ指摘する。

鳥　類　　　　森島達男（日本野鳥の会愛知県支部）

オオタカでわかった生態系の多様性　-　オオタカが見つかり、海上の森の生態系の多様性が証明された。それ以外にも貴重な動物たちが居る。彼らの「指定席」を残すことの重要性を訴える。

ほ乳動物　　　　吉田正人（日本自然保護協会、保護部長）

1+1+1＝0になる環境アセスメント　-　自然破壊に対して行われる「代償措置」が果たして有効か。万博・新住・道路のアセスメントの形だけの連携に疑問を呈する。

動物生態　　　　金森正臣（愛知教育大学）

結論が先にあるような欠陥アセスメント　-　アセスメント準備書では、通常何か月もかかるムササビの行動調査をたったの三ヶ月で終わらせ、オオタカの行動圏を都合のいいように歪曲していると指摘。「影響なしという結論を出すためにデータを都合よく使っていると批判する。

第二部　シンポジウム・討論

6名のパネリストによる討論　-　地質・植生・動物のそれぞれの講演者の観点から海上の森を立体的に考える。波田さんは、準備書の一つ一つのデータにはいいものがあるが、それらが総合的にまとめられていないという。森山さんは、県側の資料を使って、開発による自然破壊の恐れを予言する。会場からは異論や爆笑質問もあり、活発な議論が行われた。

第三部　海上の森の未来に向けて　（書き下ろし原稿）

海上の森のオオタカとその保護　　　　小板正俊（財）日本野鳥の会、企画部）

オオタカの生態を全国的な視野から解説するとともに、海上の森に棲む3つがいのオオタカと1羽のメス亜成鳥の生育環境を解説。これらの棲息地はかならずしもまとまったものではなく、季節によって、必要に応じて海上の森全域を多様に利用していることを指摘。

里山としての海上の森の歴史　　　　森山昭雄

里山としての海上の森の歴史　-日本の自然環境を守るとは、里山を守ることだ。愛知県の里山の中で、開発から取り残された広い雑木林が生物多様性を育む。戦後の森の皆伐から出発した海上の森の歴史的変遷を、住民からの聞き取りと航空写真の判読から明らかにする。

資　料

1.瀬戸周辺および海上の森の年表　2.瀬戸市南部地区新住宅市街地開発事業に係る環境庁長官意見の提出について