希望
細く、暗い道を歩いていた。
道の両側には木が生い茂り、町の明かりも、星の光さえ届かない道だった。
ふたつの影すら浮かび上がらせることすら出来ない闇だった。
隣を歩く人の表情を窺い知ることも出来ない。
ただ、手のぬくもりだけが繋いだ手から伝わってくる。
どこへ行こうというのかも解らず、ただ、彼女は彼にしたがってここまでついてきたが……。
ふたりに会話は無い。
必要ない。
このぬくもり以外、互いに信じられるものが無いのだから。
そして、どれくらい黙々と歩きつづけたのだろう。
彼がふいに、強く彼女の手を引いた。
木々の合間から微かに光が見えた気がした。
けれども彼は止まらなかった。
少し足早になってなおも歩きつづけ、広場に辿りついた。
見晴らしの良い高台といったところであろうか。
彼女は彼の手をぎゅっと握った。
眼前に広がる光。地上も星を散らしたように、キラキラと瞬いて。
儚い光に照らされたふたつの影がひとつに重なった。
どこかで、黒い影が飛び立った。