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みかんのGIS−地質・地形から常緑果樹園の適地を探る−I02G055 谷 博樹
T はじめに温州みかん(Citrus unshiu 以下みかん)の産地は、和歌山県有田市付近、愛媛県八西地方など特定の地域に偏っている。 これまでに、森林の発達には、気温や降水量以外にも地質や地形が影響を与えていることが指摘されている(太田ほか,2004など)。 本研究では、常緑果樹園の成立に適した条件を、地質・地形の観点から解明することを目的とした。 U 解析対象みかんの出荷量上位4県 (農林水産省,2005)において、中心的な生産地である海南(和歌山県)、八幡浜(愛媛県)、浜松(静岡県)、玉名(熊本県)の1/5万植生図(環境庁,1999)を解析対象とした。 この4地域の気候は、年間降水量1,600〜1,800mm、年平均気温16℃である。 海南および八幡浜の地質は、三波川変成岩帯・秩父系の古生層を中心とし、浜松では沖積層・洪積層・古生層の3種であり、玉名は種々の堆積物や火山岩類などであった。 V 解析方法植生図と地質図を400×400のラスタ型データに変換し、50mメッシュのDEM(Digital Elevation Model)から算出した地形属性(斜面角度、凹凸指数、斜面方位、日射量、海までの距離)とオーバーレイ解析した。 地形属性の算出にあたっては みんなでGIS(小池,2001)とExcelのV.B.A.(Visual Basic for Application)で自作したマクロを使用した。 W 結果1. 地質:変成岩(特に緑色片岩)、一部の火成岩類で常緑果樹園の分布割合が高くなる傾向にあった。 2. 地形:斜面角度・凹凸指数との関係を見ると、斜面角度21〜30°の直線的な斜面で分布割合が高くなった。 3. 方位:海南を除けば、海や湖に向かう斜面方位で分布割合が最も高くなった。 4. 日射量:日射量が多くなるにつれ常緑果樹園の分布割合が高くなるが、日射量が6400MJ/uを超えると分布割合が減る傾向が見られた。6400MJ/u以上のところではアカマツ植林の分布割合が増加した。 5. 海までの距離:八幡浜では、常緑果樹園の分布割合が、海から離れるに従い減っていた。 これは、八幡浜が平地の少ない地形で海とみかん山が接しているからである。 しかし、平地の多い他の3地域では、海に近い場所は、市街地や水田、畑地の割合が高く、少し離れてから常緑果樹園の分布割合が増加し、さらに離れると減少した。 X 考察常緑果樹園は、傾斜が24°程度の直線的な斜面で、太陽光を効率よく受けられると考えられる。 凹斜面は受光量が減少し、凸地形は土壌が乾燥し過ぎることが考えられた。 方位による分布割合の違いは、より多くの日射や散乱光を得られるためではないかと考えられた。 海南以外の地域では、常緑果樹園の分布割合の高い方位は、海や湖に向かう方位であり、これは、海面や湖面からの反射光を得やすいためと考えられた。 海南の場合は、山が東西に伸びその南側が川に伴う平野となっているので、他の山の影になることがない。 このため、海のない方位で分布割合が高くなったと考えられた。 また一方で、海から離れると、標高が高くなるか山を越え盆地になることがある。 そうなると、年間の最低気温が海沿いに比べより低くなる。 みかんは、霜や雪などで傷がつくと商品価値がなくなるため、被害を受けにくい海の近くに立地することが多いという面も考えられた。 海南の場合は、比較的内陸まで平野が続くため、盆地ほど冷え込まないのではないかと考えられた。 このように、海までの距離と常緑果樹園の分布割合との対応関係は、その地域の地形パターンに大きく左右された。 Y まとめ以上のことから、常緑果樹園に最も適した条件は、『古生層などの地質で、斜度24°程度の直線的な斜面であり、かつ、その斜面の前方が海や湖などに面して開けていること』であると考えられた。 (平成17年度 卒業研究要旨集より 一部訂正)
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