アテツの語源・意味は?
初めまして アテツマンサク の事ですが、アテツの語源とかアテツの意味が解かりま せんので、教えて頂きたくてキーを叩きました。 ・・・ 新潟の村松町に住んでおり、やっとマンサクやナニワズが咲き出しました。(新潟県 Oさん)

 アテツとは、阿哲地方の事を意味します。 阿哲とは岡山県新見市地域の古い地名で、植物分布の観点から使う「阿哲地方」は岡山県の北西部から広島県の北東部にかけての地帯であり、石灰岩地域を含む堆積岩の地層が広く分布している地域を指します。

 石灰岩地域は遺存種や固有種が多く分布することでも知られていますが、特にこの地域は分布上、興味ある地域として、古くから知られています。

 特徴ある種が多産する原因の1つとして、朝鮮半島とのつながりが考えられています。中国地方は朝鮮半島との距離が近く、氷河時代の海水面が低下していた時代では、ほぼ陸続きに近い状態であったと考えられています。厳密には、日本海から流れ出る、河川により隔てられていたわけですが 。

 このような状態のため、満州・朝鮮系列の植物の隔離分布種も多く存在し、満鮮要素と呼ばれますが、これらの植物が阿哲地方に多く残っているのもこの地域の特色のひとつです。具体的には、キビヒトリシズカ、シロヤマブキ、ナツアサドリ、チトセカズラ、チョウジガマズミ等です。

 このような特色を持つ地域であるため、古くから多くの植物学者が注目し、調査を行っています。例えば、牧野富太郎も頻繁に訪れています。これらをまとめ、前川文夫博士が「阿哲地域」という、植物分布区系を提唱したのだったと思います。

 大陸系の種が残存していること、またこの地域での固有種(例えば、アテツマンサク)などの種が分化した背景はこの地域に石灰岩が広く分布していることと、無縁ではないとおもいます。通常の植物が生育しにくい、崖地や谷などの地形要因と、土壌的な要因が重なり、またこのような地形的要素を持った地域が広く広がっているために、多くの種が多数生残できる環境があったものでしょう。

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