日照条件と紅葉

○イチョウの黄葉
 東京に冬出張すると、「紅葉が遅れているな」と感じる。真冬でも街灯のほとりでは、落葉樹の葉が力無くではあるが緑色のままぶら下がっている。東京ではヒートアイランド現象によって真冬でも気温が零下に下がりにくい。最初は気温が下がらないためであろうと思っていたが、夜も街灯によって光が当たっていることに大きな関係があるようであった。
 下の写真は、理大一学舎脇のイチョウである(2000/11/24撮影)。イチョウの植栽が後なのか、街灯の設置が後なのか記憶がないが、どちらにしても樹木が生長することを念頭に入れていない、無粋な両者の関係である。街灯とイチョウがひっついてしまっている。夜間も光合成可能な照度の光が当たると、長日条件となってしまい、光が当たっている部分は秋が来ていないと認識しているに違いない。反射式の街灯の光が当たる部分よりも上側は正常に紅葉しているのだが、光があたる部分から下はまだ緑色が残っており、街灯から遠ざかるにしたがい、色あせている。紅葉が美しいためには、メリハリの利いた日照条件が必要である。

上の画像は2000.11.24 約2週間後(12.8)の様子

○ソメイヨシノの紅葉
 地面に落ちた紅葉を見ると、紅色が濃い部分と薄い部分がある。葉が重なった部分の紅葉が鮮やかではないのである。下の写真は、ソメイヨシノの紅葉であり、この枝はより上部の葉によって直射光が当たりにくい位置にある。しかし、昼過ぎから直射光が当たるのだが、この写真を撮影した直後には、太陽は建物の影に入ってしまい、直射光は当たらなくなってしまう。中央の葉(右の拡大部分)を見ていただきたい。中央の葉は、上側の葉によって光が遮られる部分だけが、黄色であり、直射光が当たっている部分は美しく紅葉している。ちなみに、光を遮っている葉の紅葉は、見事である。
 1枚の葉の中での紅葉の微妙な色合いの違いは、このように光の当たり方、上位の葉との重なり具合によって生じる。一枚の落ち葉を見れば、落ちるまでの状況の一端を推し量ることができる。
ソメイヨシノの紅葉ソメイヨシノの紅葉



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