岡山県玉野市の禿げ山



 岡山県玉野市には、禿げ山をそのまま放置して保存した場所がある。「禿げ山保存地学術参考林」と呼んで良いような場所である。禿げ山であった地域のほとんどは、治山工事が行われ、何とか植生が回復している中、この地域は50年前とあまり変化がない。この地域に立てば、治山工事の成果を如実に知ることができる。広い面積ではないが、禿げ山をそのままの状態で残してきた先人の卓見に敬意を表したい。



 岩盤が露出している地域では植生の回復が非常にゆっくりとしている。当面、土壌が形成される可能性は低く、このまままの状況が続くものと思われる。生育している植物は、クロマツが主。



 花崗岩が深層風化している場所では、溝(ガリー)が形成されており、侵食が続いている。クロマツが生育している場所は侵食されにくいので、結果として尾根筋の部分に樹木が生えている状態となっている。これらの小さな松の樹齢は30〜50年である。



 花崗岩の風化土壌は「真砂土:マサ土」と呼ばれる。この地域は結晶の大きな花崗岩が基盤であり、風化して形成される土壌も粒径が大きい。このような土壌は保水性が低く、植物の定着・生育を困難にしている。植物の定着速度の遅さは、土壌侵食を加速することになり、悪循環が生じている。近隣の渋川海岸の砂浜は、このような粗粒の砂が流れ込んで形成されており、普段裸足で歩く習慣が無くなってしまった我々には波打ち際までたどり着くのが一苦労である。



 尾根に生育しているクロマツ。剪定したかのように、地表面に沿って枝を伸ばしており、高くなる気配はない。このような他の個体との生存競争が低い場所では、高くなることが得策ではない。根を十分に張ることが生き残っていくための戦略である。



 この地域の沖合、岡山県玉野港から3km香川県香川郡直島がある。この島では大正6年から銅の精錬が行われている。また、近隣の地域には直島の精錬所よりも古い、日比精錬所もある。精錬の際には亜硫酸ガスなどの「SOx」が発生する。これらの排ガスは公害防止技術が確立されるまでの期間は外部に放出されてきた。この精錬所から排出される亜硫酸ガスは地域の自然に大きく影響を与えてきたに違いない。



 禿げ山保存地の、池を挟んだ対岸では治山工事が実施された。斜面の向きが反対(東向き)なので一概には言えないが、治山工事の効果がよく示されていると言えよう。

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