昔の蒜山

 古い蒜山の写真を見つけた。撮影年代ははっきりわからないが、おそらく昭和20年代から30年代に撮影されたものであろう。ほぼ50年前の画像である。
昭和20年代(?)の上蒜山 【昔の上蒜山】

 蒜山高原では、第二次世界大戦終了直後から、引揚者などが大量に入植した。
 戦前から高原は採草地や放牧地として利用されてきたが、入植によって畑として開墾されていった。
 画像を見ると、高原は一面の草地や畑であり、高木は一本もない。
 この画像はダイコンが写っているので、夏であろう。点々と黒い点が見える部分は低木が生育している地域であり、山裾では、尾根の部分だけに低木が生育していたことがわかる。
昭和20年代(?)の上蒜山  上の画像の一部をコントラストを強くし、ほぼ同じ位置からの現在の画像と比較してみよう。今の画像は残念ながら冬山しかない。
 山頂から中腹まで、広く草地が広がっていたように見える。中腹から山裾にかけては部分的にわずかに樹林があるように見えるが、ほとんどは低木のようである。

 昔は草地維持のために春に野焼きを行っていた。火は時として、山頂まで燃え上がったという。そのような人為のために、高原ではほとんど樹木が生育しておらず、蒜山の高原に面する南斜面は、低木が生育する程度の状況であったものと思われる。
2003年1月12日
昭和30年代(?)の蒜山三座 【昔の蒜山三座】
 スキー場として利用され始めた時代の画像であろうか、プレハブのバンガローが建設されている。

 蒜山を見ると、山頂付近が黒いが、森林が残っているのか、雲の影なのかはよくわからない。しかし、山裾は広く採草地になっており、草原は中腹から更に上の尾根にまで広がっていることがわかる。
夏の蒜山三座(2000年7月22日撮影) 【現在の蒜山三座】

 2000年の7月に撮影した画像に、ほぼ同じ位置からのものがあった。
 比較してみると、ずいぶんと森林が回復していることがわかる。
昭和30年代(?)の蒜山三座
夏の蒜山三座(2000年7月22日撮影)
冬の蒜山三座(2003年1月12日撮影)
 同じ部分を比較してみた。昔の画像(おそらく昭和30年代)では、広く、草地が広がっているのがわかる。現在の夏の画像では、ササ草地が尾根などに残っていることがわかる。冬の画像では、雪に覆われている場所は、夏の画像よりも広く、ササ草原と低木群落が雪に覆われているのであろう。最近の2画像を比較すると、ササ草原の地域と低木群落の範囲がわかることになる。
 現在は国立公園に指定されており、自然が豊かな蒜山のイメージがあるが、昔は山頂に至るまで、人間の活動によって大きく自然が改変されていたことがわかる。このような樹木の回復は「自然の復帰」であるが、一方で採草地やササ草原に生育する種の大幅な生育地の減少となっている。かつて一面に生育していたと言われるオキナグサは見られなくなってしまった。自然利用の停止が動植物たちの生育・生息に大きな影響を与えている。

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