深入山 −植生学会第10回大会エクスカーション− 2005.10.10 広島県山県郡安芸町太田町 標高800m→1153m) 旧広島大学で行われた植生学会のエクスカーションで、深入山に登りました。大型バス2台とマイクロバス1台+自家用車、100人以上という、大勢の参加でした。 |
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予定通り、いこいの村に到着.まずは広島大学の豊原源太郎先生からのガイダンス. 深入山は火入れにより草原が維持されている。火入れは上部から下部に向かって行う・・・などの説明があった。(ちょっと長かったかな・・・?) |
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深入山の草原群落識別表によって、植生の説明と、植生図の作成方法などの解説・・・・ しかし、この植物は何? 何? ・・・で多くの参加者は、説明に関しては上の空だった・・・? 土壌が堅密なためか、全ての植物が小さい。場所が違うと植物の顔が違うようで、「これなんですか?」→「ゼンマイ」、「これは?」→「シシガシラ」・・・そんな植物がわからないメンバーじゃないはずなんですが |
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斜面下部では、植生の高さは結構高く、1m前後でしょうか。 土壌は粘土質で、よく滑りました。流紋岩らしい土壌であり、水分保持力が高く、堅密な土壌で、全般的には植物の生育には適していない物理性を備えています。 |
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顕著な谷が発達しないのも流紋岩地域の特徴の1つですが、狭い谷が見られ、そこでは火入れの時に雪が残っているのでしょう。 火入れの影響が少ない場所ではコナラ、ブナ、コシアブラなどからなる樹林が筋状に残っている。 火入れが行われる場合、カシワが残ることが多いが、当地ではカシワの生育は見られない。 |
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緩やかな地形 流紋岩地域ではこのような明瞭な谷のない、地形になりやすい。 |
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中腹の植生 植生高は次第に低くなり、ススキの穂は少なくなる。チュウゴクザサやチマキザサなどのササ類が目立つようになる。 チマキザサ、マルバハギ、ヤマハギなどが顕著.ススキは次第に少なくなる。 |
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深入山の山頂 なだらかな曲線を持つ山頂は、土壌が流れにくいことを示している。粘土質の土壌は流れにくい。 |
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頂上近くの植生 紫色のヤマラッキョウが開花している。そのほかの植物は、サルトリイバラ、マルバハギ、コナラ、オオバギボウシ、スゲ類など. |
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山頂近くの植生 リンドウの開花 チマキザサ、オオバギボウシ、ワラビ、ススキ、マルバハギ、ヤマラッキョウ、ヤマヤナギ、コナラなどが生育 |
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山頂近くの植生 ウメバチソウの開花 ススキ、チマキザサ、アラゲナツハゼ、コナラ、ショウジョウスゲ、ヤマヤナギ、マルバハギ、紅葉しているのはワラビ |
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節理のある流紋岩 山頂近くでは、流紋岩が薄く割れているのが観察された。場所によって流紋岩の性質も違うようであるが、この地域の流紋岩は小さく割れやすいようである。 |
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コナラの矮小木 毎年火入れされるためであろうが、コナラは高さ数十cm程度の高さとなっている。葉は小さく、ドングリも小さい。 火入れの歴史はわからないが、ひょっとかすると、この程度のコナラでも、樹齢百年クラスなのかも知れない。 |
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頂上付近からの眺め なだらかな斜面が続き、下部になってようやく谷が形成されている。谷の部分は雪が残って燃焼しないので、森林が残っている。 点々と樹木が残っている斜面は西斜面。これも同様な理由であろう。 |
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ホクチアザミの咲く草地群落 ススキ、コナラ、チマキザサ、ショウジョウスゲ、アキノキリンソウなどが生育. |
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流紋岩の露頭 所々には、流紋岩らしい大きな露頭が観察される。 |
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南斜面の尾根筋に残るアカマツ アカマツは元来火入れには弱い。火入れによってもアカマツが生き残るのは、燃料となる枯葉の量が少ない場合のみであり、この地域の生産量が少ないことを示している。 |
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振り返りみれば 南登山ルートを降りて振り返った深入山。 |
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ササユリ これがササユリ? 教えていただかなければ、何ユリ? と考え込んでしまうであろう。極小の茎と葉から、小さめではあるが一人前のサイズの花が咲いていた。 深入山の植物は全体的に小型である。この程度の葉で花を咲かせることができる資質を持っていることもびっくりであるが、この程度の葉で十分な光合成ができるほど、能率的に光が当たるということであろう。 |
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深入山の植物は、全般的に小さい。毎年の火入れの効果とともに、土壌が痩悪なためであると思われる。もう1つの特徴としては、湿原生の植物が多いことである。ウメバチソウ、ヤマラッキョウ、ホソバノシュロソウ、ノギラン、シオガマギク、カキラン、キスゲなどは、湿原の周辺に多い植物である。土壌が堅密であり、粘土成分に富むために、このような湿潤を好む植物が多く生育しているものと思われる。このような種組成は、沿岸部の流紋岩地帯とも共通性があっておもしろい。 |