岡山県とメッシュ気候値


 岡山県におけるメッシュ気候値の範囲
海抜0〜1144m
年間平均気温7.6〜16.2℃
WI62.5〜134.3℃
CI−31.7〜0℃
年降水量1069〜2666mm


1.海抜高度と気温(図2,3)

図2.岡山市の月平均気温と降水量(図3,4の+の位置のメッシュ気候値による).

 中国地方に位置する岡山県は,南は瀬戸内海に面し,北は海抜1000m級の中国脊梁と背中合わせに鳥取県と隣接している。

図3.暖かさの指数の分布(単位:℃・月)

 海抜100m以下の低地は沿岸南部に広く分布しており,このような地域は概ね,年平均気温15℃以上,WI120℃以上である。海抜200m以下の地域は一級河川沿いや,県北の盆地に分布しており,県中部には海抜400m前後の吉備高原が広がっている。県北では急激に海抜が高くなり,海抜1000m前後の脊梁に達する。海抜800m辺りの年平均気温は約10℃,WIは約85℃である。

 吉良(1971)の暖かさの指数による気候帯区分によると,岡山県では大部分の地域が暖温帯域に属していることになり,温度条件のみから見れば,沿岸部にシイ・タブ林が中部にカシ林が,脊梁部にブナ林が成立することになるはずである。

2.降水量(図2,3)

図4.年降水量の分布(単位:mm)

 年降水量の分布では,1200mmに満たない地域が沿岸部の諸処に分布している。1400mmに満たない地域は内陸にまで入り込みながら南部に広範に分布してる。このような地域は,広島県福山平野,及び兵庫県播磨平野の一部にも分布している。メッシュ気候値による岡山県沿岸南部の年降水量は,梅雨が平年並みに訪れた場合の値であり,空梅雨に見舞われると,半減してしまうものと考えられる。中国脊梁を隔てた日本海側に位置する鳥取市では約2000mm,太平洋側に面した四国の高知市では約2600mmの雨量に恵まれており(岡山県,1993),これらに比べると,いかに少ない雨量であるかがうかがえる。


3.メッシュ気候値間の相関(表1)

 岡山県は,南部で瀬戸内海に,北部で中国脊梁に面しているため,基本的な海抜高度の分布は南で低く,北で高い。メッシュの気温は海抜と気温低減率により算出されていることもあって,高い相関を示しており,南で温暖,北で寒冷となっている。降水量に関しても基本的には,高い相関を示しているが,他のメッシュ気候値の相関に比べるとやや低値を示している。これは降水量の分布が,海抜高度や気温に左右されない地域特性を持っているためと考えられる。

表1.メッシュ気候値間の相関.
1.海抜高度 (m) 1.000
2.WI (℃・月)−0.979 1.000
3.CI (℃・月)−0.972 0.976 1.000
4.年平均気温(℃)−0.982 0.998 0.988 1.000
5.年降水量(mm) 0.882−0.907−0.911−0.913 1.000


4.気候帯の呼称について

 文章中に記す気候帯の呼称は,便宜上以下のような定義によった。

    冷温帯域
    WI85℃未満の地域を冷温帯域とした。
    暖温帯域
    WI85℃以上の地域を暖温帯域とした。
    中間温帯域
    一般に,冷温帯におけるブナ林の下限はWI85℃付近に,暖温帯における照葉樹林の上限はCI−10℃付近にあるとされている。従って,おおよそWI85℃以上,かつCI−10℃未満の地域を中間温帯域と称した。岡山県では,WIとCIの相関は非常に高いため,CI−10℃の等温線は,WIでは約95℃の等温線とほぼ一致している。

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岡山県における植物分布要因の解析
出典:難波靖司・波田善夫,1997.岡山県自然保護センター研究報告(5):15−41.
最終更新日:2000/07/07