瀬戸内海産スナメリの生態と最近の動向について

粕谷俊雄(三重大学生物資源学部)





スナメリはイルカの仲間で、日本にいるものは2m程度になるという。
海はつながっているので、日本に棲息しているスナメリはお互いに交流があるものと思っていたら、
@大村湾 A有明海 B瀬戸内海 C伊勢湾・三河湾 D東京湾〜仙台湾の
5グループに分化しているのだという。この5グループは交流していないのだそうだ。

スナメリの船上からのセンサスによる21年間の比較が控えめに説明された。
前回は確認されたが、今回は確認できなかった印(●)が瀬戸内海を埋め尽くしているように見えた。
どの場所でも減少していたが、周防灘だけは昔のままか、若干の減少にとどまっている。

スナメリの減少は定置網などの漁業によるもの、船舶のスクリューに巻き込まれるもの
DDT・PCB、有機スズなどの蓄積による中毒や環境ホルモンによる繁殖率の低下
などの可能性が指摘された。減少したのは20年ほど前からであるという。

スナメリの減少は、他人事ではない。瀬戸内海から取れる魚を食べている人間の問題でもある。
打ち上げられた死体に含まれているPCBなどは、障害が発生するほど量になっていることもあるという。
周防灘以外でスナメリが減少しているのならば、食べて良いのは周防灘の魚だけかもしれない。

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