U 植生遷移 Succession
B.アカマツ型二次林
 萌芽再生能力のないアカマツツツジ科などにより構成される二次林。アカマツやツツジ類は小型の風によって散布される種子を形成する。発芽には光の刺激が必要であり、菌根を形成して痩せ地にも生育できる能力を持っている種が多い。
 森林を過剰利用するとこのようなアカマツを優占種とする森林となりやすい。全国各地の二次林として普通であるが、南西日本で広い面積を占め、北に至るほど、上記のクヌギ−コナラ林が広くなる。同一の気象条件の中では、尾根筋などの土壌浸食が発生しやすく、乾燥しやすい場所でアカマツ型となりやすく、地質的には保水力の低い砂質土壌が形成されやすい花崗岩地域でアカマツ型となり安い。
 アカマツやツツジ類は種子が小型であり、光発芽の特性があるので腐植土が厚く堆積した場所では侵入・定着が困難である。したがって、森林の過剰利用によって禿げ山化した場所はアカマツ型として森林が再生することになる。一方、表層土壌を薄利してアカマツの定着をはかる「山掃除」も行われた。積極的にアカマツ林を育てる施策が行われていたことがわかる。
 アカマツ林の育成方法は、主に天然下種更新によるものであり、伐採する林地の中で優良な形質を持つ個体を適度に残し(残し木)、その他の樹木をすべて伐採する。その際、高木のアカマツは用材あるいは薪炭材として利用し、その他のソヨゴなどは薪炭として、あるいは肥料として利用した。斜面中部から下部などの落葉が堆積して腐植が形成されている場所では、熊手などでこの層をはぎ取り、下層の鉱物質土壌を露出させるなどの「山掃除」を実施する。アカマツ林が成立すると、枝を切り取り、材木として良好なものへと生長させ、切り取った枝は燃料として搬出された。このようなマツの枝は、瀬戸内海では製塩用の燃料として重用された。
 アカマツ林の発達は、森林の過剰利用とともに、アカマツの有用性に原因がある。アカマツは燃料として優秀であり、一気に燃えて灰となって飛散する。高い温度を必要とする「鍛冶」にはアカマツの炭が好適であったという。岡山の備前焼にはアカマツの薪を欠かすことができない。このような燃料としての利用の他、一般建築材、炭坑の坑木としての利用も多く、照明用の松明としての利用も重用であった。
 このようなアカマツ型二次林も燃料革命によって放置され、1975年前後から始まったマツ枯れ病によって、大きな被害を受けて減少しつつある。


抜きんでて樹高の高いアカマツが残し木であり、これらの優良な個体を残して伐採し、これらからの種子によってアカマツ林を再生する。下層には元気の良い若いアカマツが群生して順調にアカマツ林が再生されている。

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