イタドリ Reynoutria japonica Houtt. (タデ科 イタドリ属
 イタドリは大きくなる多年生草本で、高さ2mになる。茎は太く、中空で竹のように節があって最小限の資源で大きな強度を持つ茎を作り出している。もちろん、春の新芽のころには茎は柔らかく、折り取るとポコンと音がし、食べるとスッパイので「すかんぽ」、「かっぽん」、「ぽっこん」などと呼ばれたりもする。高知の朝市では漬物にしたものが販売されていた。
 北海道西部以南の日本各地に分布し、朝鮮・中国・台湾にも分布する。路傍や荒地までさまざまな場所に生育するが、肥沃な場所では大きく生長し、枝分かれして枝先は垂れ下がる。刈り取りされる場所でも生育が見られ、強い植物である。このような旺盛な生活力は太い地下茎のためであり、崩落地などでいち早く群落を形成する。
 初秋から枝には小さな白い花がたくさんつく。秋のお月見の頃に花が咲き、花の色が紅色を帯びるものをベニイタドリ(名月草)と呼ぶが、花の色にはさまざまな段階があるようである。秋には翼がある種子ができる。風に助けられ、分布を広げる風散布種子である。新規の場所に定着するには風で種子を散布し、いったん定着すると太い地下茎で群落を広げ、春に竹のように一気に生長して、樹木などの侵入を防いでいるように見える。
 イタドリの生育地にはクズカナムグラなどのツル植物の生育も目立つ。春から初夏はイタドリの群落であっても、盛夏から秋にはツル植物が生長してクズ等に覆われてしまうこともある。このような場所には樹木は容易に侵入できず、侵入できたとしても夏にはツル植物に覆われ、引き倒されてしまう。近くに生育している大きな樹木にも、イタドリの茎を伝わってクズが登っていく。まるでイタドリとクズが共同して樹木の侵入・生長を防いでいるように思えて面白い。
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