カスミザクラ Prunus verecunda  (バラ科 サクラ属
 カスミザクラは北海道中部から九州に分布する落葉高木(四国・九州では少ない)。和名は「霞桜」。花はソメイヨシノより1週間から2週間ほど遅く、新緑の初め頃に花が咲き、早春の山に点々と咲く姿は霞桜の名にふさわしい。
 岡山県では、マツ林がマツ枯れによって荒廃し、10年ほど経過した頃からサクラの開花が目立ち始めた。マツ林の下層に生育していたカスミザクラなどが大きく生長し、開花し始めたのである。特に中・古成層地域では個体数が多く、花見ができるのではないかと思われる状況であった。しかしながら、現時点では次第に個体数を減少させつつある。コナラやアベマキなどの周辺木が生長するにつれ、枯死する個体が目立ち始めている。単なる被陰による枯死ではなく、菌類などによる病気によるものと思われる。その理由は、前年まで美しく開花していた個体が、突然枯死する個体をよく見るからである。このようにみると、カスミザクラの巨木は見たことがない。遷移の初期から中期にかけて一時を彩る樹木であるのかもしれない。サクラの仲間では、ヤマザクラも生育しているが、圧倒的にカスミザクラの個体数が多い。特に芽生えや低木層に位置する個体でその傾向が顕著である。ヤマザクラに比べて耐陰性が高いのではないかと考えている。
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