モミ Abies firma (マツ科 モミ属) | |
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モミは常緑の針葉樹。生長は速く、大木になる。神社の境内や社叢などに生育していることが多いが、近年は各地の二次林にも稚樹が生育しているのが認められるようになった。マツ枯れの後に侵入したものと思われる。 本来の生育地は夏緑広葉樹林と照葉樹林の境界域を中心とした地域であり、それを指して中間針葉樹林帯と呼ばれることもある。岡山県における分布では吉備高原を中心とした地域に点々と見られる。地形としては尾根筋や斜面上部などの急傾斜地であることが多い。 アカマツと同様に、発芽・定着には腐植質が地表を覆っていないことが必要であり、斜面崩壊や表面侵食などによって鉱物質土壌が表面に裸出しやすい立地に生育する。 神社では、神様がおりてくる際に目印となるような樹木が好まれる。先端の尖ったスギやモミなどの針葉樹が最適のようであり、このような役割を持った樹木を「当て木」(あてぎ)という。神社に生育しているものには、当て木として植栽されたり、積極的に残されたものも多いものと思われる。材木としては良材ではなく、棺桶ぐらいにしかならないとの話も聞く。あまり利用されなかったために残った側面もあるのかもしれない。 |
モミの葉は、若木では葉の先端が二つに分かれており、先端は棘となっており痛い。葉の裏面には白色の縦線があり、この部分に気孔がある(気孔列)。 |
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モミは大木であっても折れやすい。生長が速いので他の樹木から抜きん出て高いので風当たりが強いということもあるのだが、台風の後などで倒れているのを見ることがある。根が抜けて倒れている場合もあるが、幹の途中からボッキリと折れていることも結構多い。折れ口を見ると、年輪がはがれるように割れており、材そのものがもろい感じがある。心材もなく、幹の補強は不十分であり、倒れて新たな個体が再生するというサイクルを繰り返すのであろうと思われる。 |
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| 雲仙のモミ林:長崎県雲仙の普賢岳南の仁田峠付近にはモミ林が広く発達している。海抜は約800〜1000mの範囲であり、谷沿いでは樹高は高いが、尾根に近くなるにつれて低くなり、数mの樹高となっている。モミ以外に高木性の樹種が生育していないので、まるで亜高山帯の針葉樹林のような景観となっている。この地域ではブナ林の要素が欠落しており、競合する種が少ないことも大きな原因であろう。おそらく噴火などの影響を受け、積もった火山灰などの上に発生したものではないかと思うが、詳細は知らない。 |