イチイ Taxus cuspidata (イチイ科 イチイ属
 裸子植物であるイチイは、厳密な意味での果実をつけない。種子の周りにある赤い果肉状の物は、仮種皮という。先端部から覗いてみると、種子が見える。なるほど、裸子植物と納得させる形ではあるが、これは正しくない。イチイの仮種皮は甘くて食べられる。岡山県にはほとんど分布していないが、変種のキャラボクが庭木として栽培されており、時折その仮種皮を食べることができるが、めったにそのチャンスはない。
 長野県を訪れてみると、どのイチイにも種が稔っている。さすが御当地であり、本場ならではのことであった。仮種皮は食べられると教えると、皆 口にした。中には中の種子をかじった者がいた。とても苦い!とのリアクション。帰って調べると、種子は有毒であるとの事。果実に相当する仮種皮の部分は甘くて食欲をそそり、中心部の種子は苦くて有毒である戦略は、鳥散布の方法としては最適であろう。裸子植物は鳥類の進化に先んじて存在していたので風散布であるものが多いが、一部の仲間はイチイのように、明らかに動物散布のシステムを取り入れている。
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