兵庫県での低湿地性植物シロイヌノヒゲ(ホシクサ科)の遺伝子多様性と保全面積
鈴木 武(姫路工業大学/兵庫県立人と自然の博物館)
海のシンポジウムに淡水の湿原に生育する植物の話とは・・・・?
と思っていたが、聞いてみるとなるほど!
集団遺伝学のわかりやすい解説から始まり、具体的な遺伝子の話へと進んでいった。
シロイヌノヒゲは湿地の面積が広いほど、遺伝子の多様性が高いのだという。
シロイヌノヒゲは一年生草本なのだが、種子の散布能力は低いらしく、
わずか数m離れただけの湿地へも移動しにくいらしい。限られた湿地の中で
の交配が長期間続くと次第に遺伝子の多様性が失われ、単純な性質を持つ個体
ばかりになってしまうようである。つまり、兄弟結婚ばかりになってしまうわけである。
このように遺伝子が単純になってしまうと、病気や環境の変化によって全滅する可能性が出てくる。
本来ならば、1つの集団は、寒さに強い遺伝子や発芽特性・様々な病気に抵抗する遺伝子など、
多様な遺伝子を持っている個体群から成り立っていることが必要である。
海はつながっているから、スナメリは遠くまで結婚相手を捜しに出かけるのかと思っていたが、違っていた。
表面上は海の水があるものの、スナメリが健全に生活できる海域は大変に狭くなっている。
シロイヌノヒゲで起こっている遺伝子の単純化が、スナメリや他の動物達にも起こっている可能性がある。
スナメリにとって、周防灘はシロイヌノヒゲの数m2の湿地と同じ程度かもしれない。
もちろんすばらしい周防灘を保護保全することは大切であるが、
周防灘だけではなく、瀬戸内海全体、いや海全体を大切にしなければならない。
水は流れ去り、やがて海へと注ぐ。当面流れ去れば身近な環境から汚染物質は無くなるが、
やがて魚などを通して人間にもどってくる。
スナメリやナメクジウオ、珍しい貝が居なくなっても、当面は人類は生きていけるでしょう。
しかし、魚や貝の居ない海に囲まれて人類は将来も生きていけるでしょうか?
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