中国電力(株)上関原子力発電所1,2号機計画の総合資源エネルギー調査会・電源開発分科会への上程について

 日本生態学会中国四国地区会は、中国電力上関原子力発電所1,2号機計画が総合資源エネルギー調査会・電源開発分科会に2001年5月16日にも上程されることになったとの報道を受け、以下のように強い憂慮の念を表明する。

 2001年5月11日の環境大臣意見は、本計画について「異存はない」とし、4月23日の山口県知事の同意意見とあわせて、電源開発分科会への上程の根拠になるものである。しかし、この両者の意見は、日本生態学会による2度の要望書にまったくこたえておらず、予定地とされる長島とその周辺の海域の類をみない生物多様性の貴重さを無視したものとなっている。
 日本生態学会は、2000年3月25日の第47回大会総会で「上関原子力発電所建設予定地の自然の保全に関する要望書」を決議して、上関原子力発電所建設予定地の貴重な自然環境と生物多様性にみあった環境影響評価を実施することを要望し、関係諸機関に送付した。その後の事業者による追加調査を踏まえた「中間報告書」(2000年10月18日付け)に対して、日本生態学会中国四国地区会は、2000年11月6日に「中間報告書に関する見解」をまとめて、その内容がきわめて不十分なものであり、日本生態学会として要望した環境影響評価にほど遠いことを指摘した。これを受けて、2001年3月29日の日本生態学会第48会大会総会において、「上関原子力発電所に係る環境影響評価についての要望書」を決議して、アセス法にそった調査をはじめからやり直すことを強く要望し、関係諸機関に手渡したところである。
 関係諸機関が、本計画のアセスメントを妥当であると評価した根拠とされた中国電力の「中間報告書」の調査結果は、環境影響評価の基本を満たしておらず、予定地の自然の豊かさを適切に把握しているとは全く言い難い。よって、この中間報告書に基づいて開発着手を容認することは到底承諾できるものではない。もし着手されるならば、瀬戸内海において極めて特異な生物多様性を有する貴重な自然生態系を破壊し、将来取り返しのつかない禍根を残すであろう。

 日本生態学会中国四国地区会は,関係諸機関に対し以下のことを要望する。

1.山口県知事は、「中間報告書」がおおむね妥当であるとした2001年1月29日の「見解」および、それを踏まえた2001年4月23日の資源エネルギー庁宛の「回答」を訂正するとともに、上関原子力発電所建設予定地の環境調査および環境影響評価を環境影響評価法に則って、実施するよう中国電力株式会社および関係省庁に要望すること。

2.経済産業省資源エネルギー庁長官は、今回の山口県知事の「回答」をもって、上関原子力発電所建設予定地の自然環境の保全には問題がないとは判断せず、今回の計画を「総合資源エネルギー調査会電源開発分科会」へ上程することに慎重を期すること。

3.中国電力株式会社は、環境影響評価法に基づいて、上関原子力発電所建設予定地の環境調査をスコーピングの段階からやりなおし、それが完了するまでは計画を進めないこと。さしずめ、生態学会の「要望書」に対して誠意をもって回答すること。

4.環境大臣は、2001年5月11日の「異存はない」とする意見を見直し、日本生態学会の「要望書」を踏まえて上関原子力発電所建設予定地の自然の保全について資源エネルギー庁長官に対して適切な意見を述べるとともに、わが国に残された貴重な浅海の自然である予定地の自然環境の重要性に鑑み、当該海域を生物多様性国家戦略のなかの主要な地点のひとつと位置づけるなど、適切な保全措置をとること。

                         以上決議する。

                         2001年5月13日             
                    日本生態学会中国四国地区会総会


上関目次にもどる / 上関ニュースにもどる / HPにもどる