特別セッションのご案内
日時:10月7日(日) 9:00 〜 10:20 (趣旨説明:5分  各セッション:20分  総合討論:15分)
場所:25号館(40周年記念会館)4階 A会場
趣旨
 1990年、バブル絶頂期のゴルフ場建設の中で湿原を移設することを決断した。設計変更によってかなりの湿原を残す事ができたものの、このままでは約半分の湿地が失われる事になってしまうからであった。湿原の移設には決断が必要であったが、温暖な地域における湿原の成り立ちに関する多くの知見を得る事ができた。それ以降、湿原の保護・保全に関し、大胆とも思える対策を実施する事が可能となった。
 今回のテーマセッションでは、湿原を移設して10年以上経過した事例に関する報告、そして多くの事例に立脚した国指定天然記念物「鯉ヶ窪湿原」における管理の姿勢、さらに新しい問題である、湿原への外来種導入の現状と対策について報告していただく事にした。これらの湿原ハンドリングの実際は、温暖な地域における湿原植生の本質の一端を示している。
S1 岡山県の湿地に移入された外来食虫植物の現状 (9:05〜 9:25)
   片岡博行(津黒いきものふれあいの里)
 岡山県では、湿原に外来の食虫植物が植栽されてしまった。外来の食虫植物は園芸品店やインターネットなどで販売されているものであるが、湿原に確実に定着し、繁茂しつつある。
 一度定着して増殖してしまった食虫植物の除去は困難であり、多大な労力を必要とする。多くのボランティアによるって継続的な作業を行っているが、完全な除去は容易ではない。
 このような外来食虫植物の容易とも思える定着は、温暖な地域における湿原においては、生存競争が激しいものではないことを示している。
岡山市藤ヶ鳴湿原における外来食虫植物の除去作業
S2 植生構造を破壊して移植した湿原の移植後の植生変遷 (9:25〜 9:45)
   西本孝(岡山県自然保護センター)
 岡山県自然保護センターでは1990年に湿原を造成した。当時はバブル絶頂期であり、各所でゴルフ場などの大規模開発が行われ、自然の保護が問題となっていた。湿原は開発地域において保護・保全されたが、一部の植生は保全することができず、移植することになった。その対象地の一つが自然保護センターの湿原である。
 湿原植生の移植は、土壌構造を保全せず、採取した植生を田植えのごとく植え広げる形とした。
 湿原は造成して15年以上の年月を経過した。その間の植生変遷を報告する。
植生植栽前の造成湿原
S3 国指定天然記念物鯉ヶ窪湿原の保護保全マニュアル (9:45〜10:05)
   波田善夫(岡山理科大学総合情報学部生物地球システム学科)
 新見市の鯉ヶ窪湿原は植物の貴重さから国指定の天然記念物に指定されている。この湿原においてミゾソバやアキノウナギツカミなどが繁茂する状況が観察され始めた。
 実はそのようなことが発生することを15年前に予想していたのだが、現実となってしまったのである。
 国指定天然記念物であるので、簡単にハンドリングできない。保全への取り組みには、基本的に許可申請が必要であり、簡単ではない。調査を行い、試行し、その結果に立脚して対策を実施するという丁寧な実行プロセスが必要であった。
 右の画像は、ため池の水位変動からの影響を軽減するための湖内堤である。
ため池の水位変動の影響を軽減するための湖内堤
  総合討論 (10:05〜10:20)

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