被子植物 Angiospermae



被子植物とはどんな植物か
 胚珠が子房に包まれている植物を被子植物という。裸子植物では、花粉を受け入れる際には胚珠が外気と直接接している時期があるが、被子植物では胚珠は子房に包まれているので、花粉は雌しべの柱頭に付いてそこから花粉管をのばし、胚珠に到達することになる。
 花粉は精核を2つ作り、1つは卵と受精して胚を形成し、もう1つは2つの極核と受精して胚乳となる。2カ所で受精が行われるわけであり、重複受精とよぶ。したがって、胚は2nであるが、胚乳の核相は3nである。
 被子植物は裸子植物よりも進化しており、より発達した花を形成する。美しい花を咲かせる植物は、被子植物であると判断して良い。このほか、水を通導させる器官として道管を持っている。仮道管も持ってはいるが、基本的には水の通道を能率の良い道管で行っている。
 被子植物は大きく分けると双子葉植物綱と単子葉植物綱に分けられる。

被子植物の花
 被子植物の花は裸子植物に比べて複雑であり、受精をより確実にし、かつ効率的なものへと進化している。子孫を確実に残すために、貴重な胚珠を完全に外部から遮断し、子房で包み込んでいる。

 被子植物の花粉の主な媒介方法には、裸子植物と同様な風に頼る風媒花と昆虫などによって媒介する虫媒花がある。被子植物の中で古いタイプの植物群は裸子植物と同様な風媒によっており、ヤナギ科カバノキ科ブナ科などの植物群はその名残を強く残している。すなわち、長い尾状の花穂を形成するが、虫の目を引くような美しい花は咲かせない。一方、もっとも進化した植物群の1つであるイネ科カヤツリグサ科植物なども目立つ花は咲かせない。これらの植物は樹木がほとんど生育せず、単一の種が広がって草原を形成するような環境で進化したものである。そのような環境であれば、丈の低い草本であっても効率の高い受精を行うことができる。

 裸子植物の林の中で進化した被子植物は、植物受精を確実なものとするための手法の1つとして、昆虫などによって花粉を他の花へと運んでもらうシステムを発達させた。森林の中では強い風が吹くことは少なく、風によって他の株に花粉を到達させることが困難であったからであると考えられている。暗い林の中で昆虫に認識されるためには明るい色の花弁を備えたり、よい香りを出すなどの方法が有効であった。特に夜間に開花する植物にとっては、香りは有効な手段である。昆虫が来訪してもらうためには、何らかの対価が必要である。花の奥底から蜜を分泌して、昆虫へのご褒美とした。

 花から花へと昆虫が蜜を求めて移動する際、同じ種類の花を渡り歩いて欲しい。異なる種類の花の花粉は無意味である。このために、植物は花の大きさや構造を種によって異なるものへと進化させてきた。蜜を提供する昆虫を限定することによって、あるいは花を咲かせる時期を限定することによって、特定の昆虫によって花粉が運搬されるシステムを構築しているのである。様々な花が様々な季節に開き、我々を楽しませてくれることになっている。

被子植物の通同組織 −能率の高い道管−
 水の消費組織である葉、水の吸収組織の根、そしてそれをつなぐ道管や仮道管などの通導組織。この3者の能力は調和がとれている必要がある。能力が低い仮道管しか持っていない裸子植物では、通導組織に投資して太い茎を形成するか、乾燥に強い葉を形成して対処する必要があった。被子植物では水の通道は能率の高い道管によって行われているので、茎の中に占める通導組織は相対的に小さいものでよいことになる。結果として大きな葉や大量の葉を発達させることが可能になる。
 ツル植物は葉と根を連結する茎に対して可能な限り投資を行わない戦略をとっている植物群である。能率の良い道管を持つ被子植物であるからこそ、ツル植物という生育様式を獲得できたのであろう。

単子葉植物と双子葉植物の違い

双子葉植物単子葉植物
子葉の数原則的に子葉は2枚子葉は1枚
維管束開放維管束が、決まった数輪状に並ぶ多数の閉鎖維管束が散在している
形成層常に存在し、寿命の長いものでは分裂して二次組織を形成する痕跡的であり、機能しないので二次組織を作って肥大することがない
葉の形と葉脈幅が広いことが多く、葉脈は網目脈細長い葉であることが普通であり、葉脈は平行脈である
節間分裂組織葉の基部には分裂組織がないので、一端成長すると葉をのばすことができない葉の基部に節間分裂組織があり、葉をのばすことができ、節の部分で伸張成長することができる
花の基本数花を構成する花弁数、雄しべ数、雌しべ数などは5あるいは4の倍数である花を構成する花弁数、雄しべ数、雌しべ数などは3の倍数である
主根と側根の区別がある主根はすぐに萎縮するので、側根ばかりとなる。いわゆるひげ根である
種子の胚の大きさと胚乳全般的に胚が大きく、胚に栄養分を蓄積して胚乳を形成しないものもある胚が小さく、よく発達した胚乳を持つ
葉の付き方葉が茎の一部に付くので、互生・対生・輪生など多様茎を取り巻くように葉が付くので、必ず互生

【関連項目:裸子植物


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