裸子植物 Gymnospermae
裸子植物にはどんな植物があるか?
まず、裸子植物にはどんな植物があるか、概観してみよう。アカマツ、クロマツ、スギ、ヒノキなどの針葉樹の仲間が代表格。これらの樹木は松かさを作り、葉が針のように細長い特徴がある。針葉樹とは少し違った印象のある仲間に、ソテツとイチョウがある。これらの植物は目だった花を咲かせない。花粉アレルギーの原因になる植物もある。幹がまっすぐなので、材木としては大変重要な樹木が含まれている。
裸子植物とは
種を作る植物の内、胚珠が裸出しているものを裸子植物という。胚珠は受精するとやがて種子を形成するが、被子植物ではこれが子房に包まれている。裸子植物ではこの胚珠が直接外界に接しているわけである。胚珠や花粉は元々葉の表面に形成される。胚珠が形成される葉はそれ専用に変化し、やがて花へと発展していく。花は葉が変化したものなのである。
裸子植物の1つであるマツでは、胚珠を形成する葉はまとまって1つの球果と呼ばれる構造物を作る。これが松かさである。花粉を形成する雄花序も球果と同様な構造となっている。マツでは、開花した時点では雌花の鱗片は開いており、花粉を受け入れるが、やがて鱗片と鱗片はしっかりと合着し、翌年の秋に種子を散布するまで中身を守っている。閉じた鱗片の中には胚珠と花粉があり、これらが成長してやがて卵と精核を形成し、受精が行われる。すなわち、花粉が雌花に到来した時点ではまだ受精が行われていない。
胚珠と花粉はシダ植物では胞子に相当する。したがって胚珠や花粉を形成する葉は、胞子葉と呼ばれる。裸子植物の場合、胞子は雌性の胚珠と雄性の花粉に分化している。このような場合、雌性の胞子を大胞子、雄性の胞子を小胞子と呼ぶので、胚珠を形成する葉は大胞子葉であり、花粉を形成する葉は小胞子葉であることになる。したがって、マツの雌花序(松かさ)は大胞子葉の集合体であり、雄花序は小胞子葉の集合体であることになる。
胚珠は受精する前に細胞分裂して多細胞になり、胚乳をため込む。その一部に造卵器が形成され、その中に卵細胞ができる。この作業に数ヶ月から数年の歳月が必要である。一方、花粉も細胞分裂して多細胞のものとなり、やがて精核(ベン毛があるイチョウとソテツは精虫)が形成され、受精が行われる。この間は自活できないので、大胞子葉などから栄養分の供給を受けているはずである。このように見てくると、まず胚乳を蓄積して種子を作り、その後受精が行われることになる。
シダ植物と裸子植物のクロマツを比較し、胞子を形成する部分の関係を見てみよう
シダ植物のベニシダなどでは、葉の裏などに胞子が形成される。シシガシラやゼンマイなどでは、普通の葉とは形が異なる胞子が形成される。スギナなどでは胞子を作る専用の葉群が分化して胞子嚢穂を作る。これがツクシの頭の部分である。シダ植物のクラマゴケでは、胞子に雌雄性があり、雌性の大胞子と雄性の小胞子が形成される。
裸子植物では胞子は胚珠と花粉に分化しており、クロマツの例では大胞子(胚珠)を形成する雌花と小胞子を形成する雄花ができる。花はツクシの胞子嚢穂に似ている。大胞子である胚珠は散布されず、雌花の中にとどまり、小胞子である花粉だけが散布される。
裸子植物は風媒花
裸子植物の送粉方式は、風に花粉を任せる風媒花である。より進化した被子植物には虫によって花粉を媒介してもらう虫媒花が多い。裸子植物が発展していた時代は、まだ飛翔する昆虫が少なかったか、活発に活動している状況ではなかったためであると考えられている。
花粉を風に乗せてとばす方法は、同一の植物が密生して生育する場合や高木などの風を受ける場合には有効であるが、点々と生育している場合や林内などの風のあまり強くない場所では効率が悪い。現在の針葉樹は群生して単一種の群落を形成する傾向がある点や、樹形が伸び上がって風に花粉を乗せやすい点、第一層に生育する植物が多い点などは、風媒花であることと関連があろう。受精を確実にするためには、大量の花粉を生産する必要があり、花粉症の原因になってしまう。
種子散布に関しても、風に頼る風散布の種が多い。マツ類の種子は鳥類に好まれ、一部は鳥によって散布されているが、二次的なものでマツとしては風散布のつもりであろう。イチョウやソテツなどは果実状の種皮を持った種子を作る(果実ではない)。このような構造を持つ種子は動物によって散布されたのかもしれない。裸子植物の全盛期は中生代のジュラ紀であるので、種子の散布者は恐竜だったのではなかろうか。
裸子植物は花粉の媒介や種子散布に現在の動物の力を借りておらず、葉も食べられる対処とはなりにくいために、裸子植物が優占する森林は動物にとって豊かなものとはなりにくい。
裸子植物の通導組織は仮道管
根と葉を分化させる植物では、その間に水分の通導組織を発達させる必要がある。水分の通道を行うものには、道管と仮道管があるが、裸子植物はシダ植物と同様に、原則的に仮道管しか持っていない。道管は上下の細胞の隔壁がなくなり、1本のパイプになったもので水分の通導能力が高い。仮道管は上下の隔壁は残ったままであり、水分は隣接した細胞へ膜孔を通じて移動する。仮道管の細胞は道管細胞のように太くない。これらの結果、仮道管の通導能力は低いので、茎には多量の仮道管を持つ必要がある。マツなどの針葉樹の材では、茶褐色の年輪と年輪の間の白色部分に仮道管がある。道管ががないので滑らかな手触りがあるし、材は軽い。
【関連項目:被子植物】