ソテツ Cycus revoluta (ソテツ科 ソテツ属)
ソテツは温暖な地方の海岸などに生育する常緑の裸子植物。庭園や学校の前庭・お寺などに植栽されていることも多い。雌雄異株であり、初夏に大型の花を咲かせる。下の画像は雄株であり、花の長さは50cm以上もある。雌花序は球形となり、多数の羽状に分かれた心皮からなる。この心皮の根本に胚珠があり、果実となる。
種子は大型であり、直径数cmで朱色。鹿児島や沖縄ではよく土産物屋で売っている。これを蒔くと簡単に発芽してソテツの鉢物を作ることができるかというと、実は簡単ではない。果実ができた段階ではまだ胚が成熟しておらず、発芽するまでにかなりの期間(確か年単位であったと思う)が必要であるらしい。何ともゆっくりとした植物である。ソテツは2億年前から生育している古い仲間であり、成長速度も実に遅い。お寺などに植栽されているものには、樹齢数百年という長寿なものもたくさんあり、天然記念物に指定されているものも多い。ゆっくりとした生長と長寿、このゆったりとした生活態度が長い歴史を生き抜いてきた秘訣なのかもしれない。
ソテツの根には藍藻類と共生して形成される珊瑚根という組織があり、空中窒素の固定能力がある。ソテツの生育立地は海岸の崖など、痩せ地であるがこの空中窒素固定能力が大きく貢献しているのであろう。自然分布は九州の南部、南西諸島、中国南部、台湾である。
ソテツの幹の内部には大量のデンプンが貯蔵されている。飢饉時などにはこれを取りだして食べたという。しかし、サイカシンという毒が含まれており、十分に水に晒して除去する必要がある。