光周性



 一日の昼と夜の長さなどの光周期によって生物は季節を判断し、様々な影響を受ける。このような光周期によって生物反応することを光周性という。
中日植物:花芽形成や開花が昼と夜の周期(光周期)に影響されない植物
長日植物:夜の長さが次第に短くなる季節(春)に花芽形成を行う植物。
短日植物:夜の長さが長くなる(夏)と花芽形成を行う植物。

○中日植物は年間を通じて光周期にあまり変化のない低緯度地方の植物に多く、大きくなると花を咲かせる。長日植物や短日植物は光周期のある中緯度から高緯度に起源を持つ植物に多く、長日植物は春に、短日植物は秋に開花するものが多い(コスモスを参照)。高山や高緯度地方などの夏の短い地方では、夏に花芽形成して秋に花を咲かせていると結実までに冬が来てしまう。したがって短日植物は少なく、長日植物の集団であり、春から夏に一斉に花を咲かせてお花畑を形成することになる。

○日周期は昼の長さではなく、連続した暗期(夜)がポイントである。しがたって、合計の暗期が12時間以上あっても、中間に明るい時間があれば、実際には6時間の暗期となってしまう。連続した暗期を破るのは、自動車のライトが一瞬当たった程度では無効であり、おそらく十分な光合成が可能な程度以上の時間と光強度が必要。
 キクは短日植物の代表であるが、夜間に照明を当てると花芽の分化を防止することができる。このような作業を計画的に実施することにより、年中キクの花を咲かせることができる。このようなキクを電照菊という。葬式には年中白い菊が欠かせない。


 イネは日照条件が年間にわたってあまり変化しない赤道付近の原産であるので、花芽の形成に昼と夜の長さの変化が影響しない、中日植物である。したがって、生長・開花・結実のサイクルは主に温度によって影響を受ける。5℃以上の温度がイネの生長に有効であるとされており、5℃以上の値をプラスした「積算温度」がイネの栽培・管理に重要である。15℃ならば、5℃を差し引いた10℃がイネの生育に有効な温度である。
 温暖な地方では、気温も高く、有効な温度を得られる期間も長い。十分な積算温度さえ得ることができれば、一年に二回の稲作も可能であり、四国の太平洋岸から九州にかけての地域では、昔二毛作が行われていた。それほど温暖ではないが、かなりの積算温度を得ることができる地域では、田植え時期にはかなりの自由度があることになる。岡山県の沿岸部では5月から6月にかけて田植えが行われる。一方、冷涼な地域においては少しでも積算温度を稼ぐために雪溶け直後に田植えが行われる。
 東北地方や北海道などの春が遅く、秋が早い地域では年によっては稲の生長に十分な有効温度をえられない事がある。冷夏による冷害である。秋になって夜の長さが次第に長くなると花芽を形成する植物を短日植物と言うが、イネが短日植物の性質を備えていれば、生長が不良であっても花を付け、実を稔らせるはずである。しかしイネは中日植物であるので十分な積算温度を稼ぐことができなければ、実を稔らせることなく冬を迎えてしまう事になってしまうわけである。
 しかしながら、品種によっては日照時間を感受するものもあり、複雑である。おそらく、温暖な地方に植栽される品種は日照時間よりも積算温度に強く影響されるものであり、北の地方に至るほど、日照時間を感受する品種が栽培されているのではなかろうか。



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