暖かさの指数 Warmth Index (3)
【暖かさの指数と植生】
 植生・植物の分布は気温の影響だけに支配されているわけではなく、降水量や低温・積雪量・地形などにも左右される。このために狭い地域では植生の分布と暖かさの指数の値が異なることになる。指数算出の根拠となる気温の測定精度も時代と共に向上していることもあり、研究者によって値が異なっている。日本列島全体の大まかな分布に関しては次の値が用いられている。

暖かさの指数森林区分気候帯山地区分主な植物
15<低木林寒帯高山帯ハイマツが群落を形成し、キバナシャクナゲ・ハクサンシャクナゲ・オオバスノキ・タカネナナカマド・タケシマラン・ミツバオウレンなどの生育が特徴的。
〜45(55)常緑針葉樹林亜寒帯亜高山林シラベ・コメツガなどの針葉樹林:トウヒ属・モミ属・カラマツ属などが高木層を構成し、コケ植物が林床を覆っていることが多い。コメツガ・カラマツ・ヒメコマツなどのほか、ダケカンバ・ナナカマド・ミヤマハンノキなどの落葉広葉樹も生育する。
〜85(100)落葉広葉樹林冷温帯山地林ブナ・ミズナラなどの落葉広葉樹林:ブナ林の他、ミズナラ林・サワグルミ林・トチノキ林・シオジ林・ケヤキ林・シデ林などの多様な夏緑広葉樹林やヒノキ・サワラ・コウヤマキ・カラマツなどの針葉樹も生育する。
〜(170)180 常緑広葉樹林
(照葉樹林)
暖温帯低山林 シイ・カシ類などの常緑広葉樹林:シイ林、タブ林、カシ林、ウバメガシ林などがある。ツル植物、着生植物、シダ植物が多く、高木ではブナ科・クスノキ科・ツバキ科・モチノキ科・ハイノキ科などの植物が特徴的。
(注)
(170)180>多雨林亜熱帯
アコウ・ヒルギ類

注:Hattori. T & S. Nakanishi (1985) は照葉樹林の分布上限のWIを 裏日本多雪地域:97 表日本少雨地域:87 表日本多雨地域:78 としている。このように、積雪量や降水量によってもWIの値は異なる。

 岡山市と蒜山のWIを上表に当てはめてみると、岡山市は常緑広葉樹林が発達する地域に該当し、蒜山は常緑広葉樹林の分布上限近くであることがわかる。蒜山の気象観測は八束村の村役場で実施されており、これよりも高い蒜山高原から蒜山の山々は、落葉広葉樹林が発達する地域であることになる。

【寒さの指数:CI】
 暖かさの指数とは逆に、5℃以下の温度を積算したものが寒さの指数(CI)である。植物の生理活性がない温度の積和であることになる。暖かさの指数とあわせて利用されることが多いが、暖かさの指数ほど植生との対応関係が明瞭ではない。

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