植物学実習 旭川高水敷の植生とオオキンケイギクの生態
(生物学実験2)



調査日:2015年5月15日 レポート提出の締め切り日:2015年6月19日(金)

調査データ(植生表)のダウンロードはここをクリック(エクセルファイルです)


調査データの解説とまとめ方

 植物学実習(生物学実験2)のレポートの解説です。

 今回の実習では、岡山県旭川の河川敷において、オオキンケイギクを中心とした植物を調査しました。レポートでは、「オオキンケイギクの生態と河川堤防法面・高水敷の植生」をテーマとします。河川堤防法面と高水敷に、なぜ特定外来生物のオオキンケイギクが大繁茂してしまっているのか? オオキンケイギクの生態と、共存および競争している他の植物や、環境条件との関係を解析してレポートにまとめてください。

 オオキンケイギクの分布(有り・無し、および多い・少ない)と、競争相手の植物の関係や、オオキンケイギクと環境条件(土壌硬度、群落高など)の関係を、いかに解析しグラフなどにまとめるかがポイントになるでしょう。

 植生調査データの解析手法に関しては、「生物学実験U の 3.植生調査」に掲載して解説してあります。この解析手法にはかなりの労力と経験が必要であることから、解説のページに掲載されている「反復平均法」によって、すでにスタンド位置指数を算出してあり、さらにその結果にしたがってスタンドと種を配列しなおしてあります。参考に、このデータ解析の手法について、簡単に解説しておきます。


1.オーディネーション
 a.環境要因に注目して調査地を配列してみる

 対象をある項目に着目して、たとえば数値の小さいものから大きなものへと序列化することをオーディネーションといいます。たとえば、土壌硬度に着目し、硬い土壌の場所からやわらかい土壌の調査地へとスタンドを配列するのもオーディネーションです。今回の調査項目に関しては、土壌硬度のほかに、草本層の高さ、植被率が使える可能性があります。調査地の配列をある環境要因に着目して配列すると、その環境要因に強く影響され、反応している植物が浮かび上がるはずです。具体的には、硬い土の場所には○○がよく生育し、やわらかい土壌の場所には□□が生育するなどの結果を得ることができるはずです。

 b.反復平均法によるオーディネーション

 環境要因による序列ではなく、調査地(スタンド)に出現する植物の類似性(植生構成種の類似性)、あるいは同所的に生育する種(同じスタンドによく出てくる種)を見つけ出し、これに着目してオーディネーションを行うこともあります。よく似た植生のスタンドを集め、よく似た行動パターンの植物を集めるという作業は、スタンドが少ないと簡単であり、かつ誰がやってもほぼ同じ配列になるが、スタンド数が多くなると大変であるし、人によって配列の結果が異なってしまい、客観性が低くなる。そこで何らかの法則によって(客観的に)配列してしまうことが望まれる。
 オーディネーションの手法には多くの方法(理論)がある。統計的に表現すれば、多変量解析の結果を利用して序列するわけである。ここでは「反復平均法」によって「スタンド位置指数」と「種位置指数」を算出し、それによってスタンドおよび種を配列したものを提供している。算出方法に関しては、植生調査を参照すること。なお、出現回数の少ない種に関しては正しい評価ができないので、除外して算出している。


2.考察に向けて

 a.スタンド位置指数と環境データの関連
 スタンド位置指数の数値は植生の類似性あるいは違いを表している。これと環境要因との関係を解析してみよう。今回調査した環境項目は、「土壌硬度」、「群落の高さ」、「植被率」の3項目である。これらの相互関係、また、スタンド位置指数との相関関係を解析してみよう。具体的には、エクセルのグラフ解析機能を利用し、2つの項目を選んで散布図を作成し、その項目間に意味のある関係があるかどうか(相関関係があるかどうか)を調べてみよう。有意な関係が存在するならば、その意味を考え、考察として述べることになる。

 b.種の解析

 種位置指数が近接している数値を示す種群は類似した生態的特性を示すことになる。今回のデータでは、反復平均法から種位置指数を算出して植物を序列すると、スギナとコウライシバが最も出現する傾向が異なるという解析結果になった。なお、コウライシバとクサイが出現するスタンド(スタンド番号43)は、自動車や人間が良く通る場所に発達した踏み跡植生であり、少し特殊なものです。
 (なお、今回のデータでは種位置指数の値は省略しています)

 さて、次に植物の種類ごとの出現パターンを解析してみましょう。まず、植物群の出現の傾向を見やすくするため、よく似た傾向の種類群に対して、枠線を付して色をつけてみました。黄色で示した部分は、今回の主役のオオキンケイギクです。紫色で示した部分は、オオキンケイギクが生育しているスタンドに多く出現する植物です。逆に、オレンジ色の部分は、オオキンケイギクと同時に出現する傾向の少ない種類となっています。青色の部分は、比較的どこのスタンドにも出現し、調査した高水敷で普遍的とみられる種類です。緑色の部分は、踏み跡の植生に特徴的な種類です。
 考察では、これらのグループに対して(もちろん、自分で新たにグループを再編・設定して頂いてかまいません)、どのような生態的な特性があるのか考えてみましょう。たとえば、グループごとに環境データ(土壌硬度や群落の高さなど)の平均値を算出し、ヒストグラムなどグラフにまとめて比較してみると考えやすいでしょう。また、一年生(二年生)草本であるか、あるいは多年生草本であるかなど、生活型に着目してみるのもよいでしょう。あるいは、草刈りに対する耐性や、ロゼット葉の有無など着目してみても面白いと思います。


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