ミティゲーション |
環境アセスメントでは、自然へのダメージの軽減が定められている。基本的には重要な自然への影響を回避するべきであるが、開発による利益と自然破壊への影響が秤にかけられるので、自然への影響が皆無である開発はあり得ない。そのような中、破壊した自然への代償措置が実施されることが多い。この代償措置をミティゲーションという。
Bビオトープは造園ではない1.ミティゲーションの現状 環境アセスメントの制度が進んでいるアメリカでは、ゼロネットロスという考え方がある。開発によって失われる自然をゼロとする といった考え方である。例えば、開発によって野鳥の生息地となる沼沢地が減少する場合、それと同等の面積と質を持つ沼沢地を代償措置として造成する必要がある。このような考え方・制度はすばらしいものではあるが、特に国土の狭小な日本においては実施することが困難な方策である。 日本における代償措置の現状は、貴重あるいは重要な自然を開発の代償措置として残す、あるいは復元・創出することを事業認可の条件とするものである。面積も限られ、十分な対処が行われているとは言い難い状況である。 今回の法律改正により、事業認可後の数年間にわたるフォローが義務付けられた。したがって少なくとも、この年月はミティゲーションとして成立する程度の対処が必要である。従来の状況では、対処すれば良かったのであり、成功する必要はなかったことに比べると、大きな進歩であるといえよう。 2.基本的考え方 @自然に対する評価 代償措置を必要とするかどうかの判断については、その自然に対する評価が重要となる。通常、学術的な評価が主な柱となり、レッドデータなどの基準が適用される。 アセス法に乗っ取れば、生態系の上位種・貴重種などの生育・生息を保証する生態系の生産者となる緑色植物に対しても、これらの保全が求められることになろう。 A自然の成立理論の解明 代償措置の例としては、ため池や沼沢地、湿原の造成・移設などである場合が多い。 自然再生は、造園的手法を取り入れることがあっても、基本的には造園とは異なり、見た目にこだわる必要はない。過剰工事は禁物である。 C自然は直線と円弧ではない 詳細な設計図を事前に準備することは不可能であり、現場に合わせた工事が必要である。 D生物の導入は慎重に 原則的に、他地域からの種の導入は禁止されなければならない。遺伝的系統などを混乱させるからである。 Eビオトープは変化する 一端、作ったビオトープは次第に遷移し、当初の設計とは異なったものになっていく。良好な方向に遷移するのであれば見守ればよいが、次第に富栄養化する傾向があることは否めない。建設目的との整合性を保つことができるよう、維持する観点も必要である。 Fビオトープの連続性 ビオトープを設計する際には、ビオトープの建設範囲にのみ注意を払うこと担ってしまいやすいが、周囲との連続性に強く留意しなくてはならない。特に水系のれのぞくせいを確保することが重要である。 「ビオトープフォーラム2011」における講演のpdfファイル |