生態学概論 Introduction to Ecology (10)
4-2.有機物の循環
窒素やリンなどの循環は、基本的には有機物の中に含まれているので、全体的には有機物の循環として理解される必要がある。有機物は生産者である緑色植物に源を発し、動物や菌類などの形態へと変化しつつ生物群集の中を循環している。有機物の分解は細菌や菌類などの生物現象であり、これらの活動は温度や酸素の有無などの環境によって支配されている。
@温度要因
温度が低いと生物活動は低下し、有機物の分解速度は低下する。冷涼な地域では分解量が有機物の生産量よりも下回る傾向が高く、森林の地表面には厚く腐植土が形成される事が多い。
A酸素
土壌中に水が多量に含有されており、移動しにくい場合には無酸素状態になることがある。このような場合には好気性細菌などの活動が押さえられ、有機物の分解が抑制される。このような例の典型的な事例は湿原であり、典型的な例ではほとんどが有機物から構成されている泥炭が形成される。
BpH
中性付近や弱アルカリ性の環境では生物活動は活発に行われるが、酸性の環境では生物が活動しにくい。有機物が分解する過程においては、酸が形成される。森林土壌などでは複雑な組成を持つ有機酸(腐植酸)が形成されるので土壌は酸性化する。湿原の泥炭形成過程でも同様な物質が形成され、場所によってはpH3台に低下することもある。
これらの環境条件の他、植物から供給される有機物の化学組成によっても分解速度は大きく影響される。例えばアカマツなどの針葉樹落葉は樹脂を含んでおり、分解しにくい。地表に供給された有機物が分解されないと、物質循環の停滞が生じる。このような有機物が大量に蓄積された場所は、多量に栄養物質を保持してはいるものの、実際に生育している植物には栄養物質は供給されず、新たな栄養物が域外から供給されない限り、貧栄養な状態となってしまうのである。