4.地質・地形と植生
石灰岩や蛇紋岩などの特殊岩石を除けば、地質による植生の違いは、植生の発達している割合の違いであり、各地質に特有な植生はない。遷移速度の違いが現在の植生の違いとしてあらわれていることになる。
遷移速度を規定している主要な要因は、気候や地域が異なればその種類や影響の度合いが異なってくるのは当然である。次に示す事例は、瀬戸内海沿岸地域を中心とする、地域におけるものである。この地域では土壌の保水力が遷移速度に大きな影響を与えている。
(1)花崗岩地域の植生
岡山市磯尾谷(花崗岩地域) 斜面上部から下部にかけアカマツ林が発達している。点々とマツ枯れ病による枯損木が見られるが、依然としてマツ林が存続している。 |
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玉野市(花崗岩地域) 斜面の上部から中部は矮性のアカマツやネズなどが生育する痩悪林地となっている。 土壌の厚い斜面下部では比較的樹高の高いマツ林が発達している。 隣接した地域には江戸時代から続いた銅の精錬所があり、長期間にわたって排出されたSOxが与えた影響も大きいものと思われる。 参考:玉野市の禿げ山 |
岡山市牟佐(流紋岩) 全般的にはアカマツ林が優勢である。谷沿いにはアベマキなどの落葉広葉樹の群落が見られるが、斜面下部でもマツ林となっている。 この地域では、散発的なマツ枯れ病が発生しており、次第に落葉広葉樹林へと変遷しつつある。 |
岡山市中原(古生層) 全体的にはアベマキ・コナラが優占する落葉広葉樹林が発達しており、マツ林は山頂から尾根の狭い範囲を占めるにとどまっている。斜面下部の落葉広葉樹林の林床にはアラカシなどの常緑広葉樹が生育しており、近い将来常緑広葉樹林へと遷移するものと思われる。 右下の角には竹林も見られるが、竹林が多いのも古生層地域の特性の1つである。 |